原油価格は再び「暴落」の懸念が出てきた OPEC諸国はこのままだと苦境に陥る

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このように、米国内の需給状況が改善されない中で、先物市場で買いポジションを膨らませてきたのが投機筋だ。OPEC(石油輸出国機構)が減産を決定し、需給バランスの改善が進むとの期待から原油価格が上昇した流れに乗る形で買いポジションを積み上げたわけである。

昨年末から約2カ月間で9万枚(1枚当たりは10万ドル)もの買いポジションを積み上げたが、その間の原油価格は54ドル台から55ドルでの推移に終始しており、買いポジションが膨らんだ割には、価格は上昇しなかった。

原油価格が「一定のレンジ」に収まった理由

実は、昨年11月初めから12月末に売りポジションの解消が進む中で、原油価格は十分に上昇してしまった。その後は買いポジションの積み増しが原油価格を押し上げるまでには至らなかったのである。

もちろん、この買いに対しては当然売っている向きがいるわけだが、それが当業者、いわゆる現物筋である。55ドルに迫る動きとなったとき、投機筋の買いに対して売りを出していたのは、おそらくシェールオイルなどの石油生産者であろう。55ドル前後でヘッジができるのであれば、採算が合う生産者は喜んで先物市場で売りヘッジを入れるだろう。結果的に、上昇局面では投機筋の買いに対して、生産者が行った売りヘッジが上値を抑える構図となり、思いのほか価格は上昇しなかったと考えられる。

これは、原油価格の下落局面でも同じことがいえる。つまり、上記のような原油在庫の急増を背景とした下落が始まってから、投機筋は急速にポジションを解消し始めたが、その結果、直近ではネット買いポジションは年初の水準を下回っている。買いポジションを減らすだけでなく、売りポジションも積み上げたことが、ネット買いポジションの急減につながったといえる。

しかし、その間の原油価格の下落もそれほど大きくない。急落後のポジション解消の反対側には、業者筋の買い戻しが存在するためである。50ドルを割り込めば、買い戻したい向きが少なくないといえる。結果的に、投機筋の大量の手仕舞い売りでも原油価格が暴落しなかった背景には、このような理由があるものと考えられる。

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