2016年5月、欧州議会法務委員会のマディ・デルボー議員が、議会に提出した報告書でロボットに課税すべきとの考えを示した。同議員は報告書でロボット普及によって不平等が拡大する懸念を強調し、「企業にはロボット工学とAI(人工知能)が業績にどの程度貢献しているかを報告させ、課税につなげる必要がある」と提案した。
この提案への反応は、ビル・ゲイツ氏が支持したことを除けば、ほとんどの人が否定的だった。だがデルボー議員の主張を無視することはできない。実際にロボットが社会のさまざまな場面で普及し始めているからである。
ロボットによって失職する人も出てくる
この1年間にも、部屋のどこでも声でAIの補助を受けられるアプリ「グーグルホーム」や、同じく音声アシスタントを使えるマイク・スピーカー・デバイス「アマゾン・エコー・ドット」など、家事をサポートしてくれる機器が誕生している。
シンガポールではデルファイとヌートノミーの2社が、ドライバー不要の自動運転車を使ったタクシーの実験を開始。スカイプの共同創業者が設立したスターシップ・テクノロジーズの自動宅配車を運用するドアダッシュ社は、実際に宅配ドライバーの仕事を奪いつつある。
こうした技術革新が加速すれば、ロボットへの課税構想にも現実味が出てくる。ロボットの普及に伴って失職し、簡単に職に就けそうにはない人々の職業訓練の資金にロボット税を充てれば、労働形態の移行による痛みを緩和できるからだ。
ノーベル経済学賞を受賞したエドムンド・フェルプス氏は自著で、「失業者が増えれば共同体全体の機能が損なわれるおそれがあり、ロボット普及に対して政府がある程度介入する余地が生じる」と指摘した。職業訓練プログラムは、人々の健全な人生には不可欠だろう。
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