働く女性が増えれば、男はもっと冒険できる テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(下)
質問③:社長が思う軌道修正能力の要素とはどんなものなのか。またそれはどういった場面でゲットできるのでしょうか。
軌道修正能力のひとつは、やはりベンチャーの経営でよく言う仮説検証ですね。仮説を持って始めて、検証してみたら違ったという現場感覚がすごく重要です。もうひとつは、僕たち的にはありえないけど、大企業的にはありえるのは、軌道修正することへの反対をいかに少なくするか。
僕たちの事例でいうと、僕たちが最初にビジネスをやろうとしたのは中国です。市場が大きいし、3000万台も電動バイクがある。工場まで決めようとしていたのですが、その直前で、大事なのは低価格ということだけであって、われわれがどうやって競争に勝っていくかがまったく見えないとわかったので、さくっとやめました。
それから新しいターゲットとして、すべてをベトナム中心でやっていました。
すると、フィリピンでオート3輪の国家プロジェクトがあるらしいという情報が入ってきた。僕たちは3輪もやったことがないし、フィリピンなんてベトナムの3分の1の市場だけど、アジア開発銀行のバックがあって、しかもブランドもつく。ベンチャーは理想論を言うのは簡単なんですけれども、基盤をつくるのも、もうひとつすごく重要。つまり信用を得るために足元の実績を出すのが極めて重要なのです。
そういう意味ではこの仕事がとれれば、もう確実に売り上げだけでも10億とか20億ですから、すぐ基盤ができる。なので、急にフィリピンへと方向転換しました。社員からすると、「えっ」という感じです。
でも軸がずれなければ、そんなに社員は動揺しないし、あとはやはりリーダーの覚悟とコミットメントですよね。そこで説得できるかどうかも大事なことだと思います。
質問③:韓国は1997年に通貨危機があって、そのおかげでサムスンが奮起したと言っていましたが、日本でもそういう危機が必要でしょうか。
これはまじめに考えたことがあります。日本の強みは僕はずっと技術だと思っていたのですが、それだけでなく、1400兆とか、1500兆の個人資産があることではないかと思った。要はファンドを運用してうまくリターンを出してそれを分配できれば、それはいいことなのではないか。それで日本国家の財政を徹底的に調べたことがあるんですよ。
それでよくわかったのは、これはもう成り立たないということです。確か日本のGDPが500兆だから、毎年50兆ぐらい赤字国債が増えています。今、赤字が1000兆円でしょ。1500兆超えたら、もう個人資産を超えてしまいますよね。
今は担保で何とかなっていますが、よく言われている国債暴落の可能性も、僕は十分あると思ってます。
悲観的楽観論なのかもしれないけれど、とにかくとことん落ちるところまで落ちて、そこからV字回復するというのが、日本に合った危機のシナリオなのかもしれません。ちょっとハードランディングすぎるかもしれませんが。
それで日本のファイナンスを調べていたとき、面白いことに気がつきました。過去に起こったことが、また周期的に起きてくるのです。70年周期説というものがあって、実際、明治維新から70年経って、第2次世界大戦に負けているのです。日本の敗戦から次の70年後は、2年後の2015年です。
だからもう一回、明治維新みたいな世界が来ると思えば、僕自身は逆にすごく面白いなと思っています。あのときも300年続いた幕末体制がガラッと変わって、下から下級武士が出てきて、社会を変えていくわけですよね。そのときに活躍できる人材になっていたいと思います。