インド・モディ首相、ブラックマネー撲滅狙う バークレイズのチーフ・エコノミストに聞く

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シッダールタ・サニアル (Siddhartha Sanyal)/バークレイズEM市場リサーチチームのディレクターおよびチーフ・インド・エコノミスト。在ムンバイ。エーデルワイス・キャピタルを経て、2010年10月からバークレイズ。エーデルワイス・キャピタルではインド経済および金融セクターの調査を統括。それ以前はインド準備銀行の経済分析政策部門に8年以上にわたり勤務。ニューデリーのジャワハルラール・ネルー大学にて経済学修士号を取得。(撮影:今井康一)

制度改革、意識改革で納税させることが大事

――インドで、一種の二重経済構造が生まれたのには、どういう経緯があるのでしょうか。

地方を中心に、銀行口座やクレジットカード、電子決済システムがまだ十分に浸透していない。伝統的に現金が決済手段の中心だ。

多くの小規模事業者は、顧客から現金を受け取り、所得を過小に申告している可能性がある。政府も、こうした小規模事業者の所得をなかなかチェックできないでいる。先日、ある会合でインドの財務相が「インドの納税意識の水準はまったく満足できるものではない」と嘆いていたほどだ。

インドの農民の大多数は貧しく、非常に小規模な土地しか持っていないため、農業所得がきちんと申告されず、非課税になっている。それゆえ、納税意識の向上は政府にとって大きなチャレンジだ。歴代政府の課題であり続けたテーマであり、われわれも期待している。

――GST導入の意義はほかにありますか。

租税制度の簡素化だ。インドの税制は複雑で、関税や売上税、地方税など多くの税がある。ビジネスの観点からすると、GSTの導入によって税制を簡素化すると、ビジネスがしやすくなる。

政府は4年間の税制改革のロードマップを作った。法人税率は30%から5%ポイント引き下げ、税額控除制度の大半を廃止する。税率引き下げで税収は落ちるが、企業にしてみれば、税制がよりクリーンになり、汚職などが減少する。

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