そして、オランダの有権者がPVVの主張を拒絶した形となったことは、英国のEU離脱を推し進めるとともに米国でトランプ大統領を誕生させたポピュリズムが、ここにきて魅力を失った可能性を示唆している。
仮にそうだとすれば、マリーヌ・ルペン党首率いるフランスの国民戦線や「ドイツのための選択肢(AfD)」といった極右政党が今年の総選挙で躍進する公算は薄まっていると言えよう。
EU存続には、これまでと同様、独仏両国の強い支持が不可欠だ。両国は経済、社会、政治を安定させるとともに結束を実現させる「希望の担い手」でなければならない。
EUは危機を糧に前進してきた
この点からすると、トランプ米大統領やメイ英首相による最近の批判は、独仏の関係強化に、結果として役立つ可能性がある。EUが一見過酷な経済的課題に直面していることも、両国の指導力発揮にひと役買うかもしれない。EUには、危機を糧に前進してきた歴史があるのだ。
現在求められているのは、黒字国と赤字国との財政と構造政策を調和させる新たな仕組みづくりだ。それにはまず、独仏の効果的な経済政策協調が不可欠だ。そうすれば、欧州の経済統合を後押しできる。
オランダ新政権が果たす役割も重要だ。欧州域内で信頼感を回復させるには、ドイツやオランダのような黒字国が欧州投資銀行の支援の下でインフラ投資を増やすことに合意する必要がある。一方で、フランスやイタリアのような赤字国は、労働と製品の市場で構造改革を進め、経済成長の可能性を高めねばならない。
独仏の総選挙がオランダ同様の結果となり、真の政治的ビジョンを示して指導力を発揮できる指導者が選ばれれば、欧州の政治状況に歴史的な転機が訪れる。そしてEUは統合に本腰を入れ、決して避けては通れない改革を推進し始めるだろう。
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