iPhoneが今になって「レッド」を出す深い理由 レッドが限定モデルから標準モデルに

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3点目はスペックからスタイルへの移行だ。

これはスマートフォン市場をアップルの得意分野に引き込む狙いがある。スマートフォンのスペックはまだまだ進化の一途を辿ることが予測できる。特にバッテリー技術については、多くの人々がさらなる性能の向上を望んでいる。

しかし、今日のスマートフォンの一般的な使い方、すなわち、電話をする、SNSでコミュニケーションを取る、写真を撮影する、といった一般的な使い方に加え、スマートホームやライドシェア、音声認識などの新しい領域を含めても、2年前のスマートフォンで十分役に立つ。

アップルの優位性を高止まりさせる戦略

iPhone SEが、2015年リリースのモデルとして存続している点から、アップルもそうした考えを持っているとみてよいだろう。

これまで発展途上だったスマートフォンはスペックが重要だったが、アップルはパソコン市場においても、スペック競争に終始しないことを強調してきた企業だ。iPhoneがスペック重視から、デザインや色を強調する展開へと移行することは、「スマートフォンの価値観をスタイルへ」という大きなコンセプトの転換となる。

液晶画面側は白い

「真っ赤なiPhoneが欲しい」という動機は、スペックとは異なる価値観で顧客の行動を生み出すことになるからだ。アップルはiPhone10周年という節目を利用し、スマートフォンの価値観転換をアピールしようとしているのではないだろうか。

もちろん、スペック面やデザイン面で最先端をいくハイエンドのスマートフォンはリリースし続けている。一方ではスマートフォンの買い換え周期の長期化傾向が見えてきており、アップルはアプリやApple Musicなどのサービス収益の成長に力を入れてきた。スタイルとアプリを重視したスマホ市場こそが、アップルの優位性を高止まりさせるからである。

REDモデルには、iPhone 10周年の年に、スマートフォンの価値観転換をより明確に示していこうとするアップルの戦略も隠されているのではないだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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