「財政赤字の拡大」は政府が今やるべきことか 日本の20年にも及ぶ長期停滞の真因

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そして、バブルが崩壊し、さらに1990年代後半にデフレに突入すると、民間部門は債権を増やし、その裏返しとして政府部門に債務が累積するようになった。

なお、2000年代前半には政府部門の収支バランスが改善したが、同時に海外部門の収支バランスが悪化している。これは、米国の住宅バブルによる好景気の影響で、日本の輸出が増大したことも影響している。

出所:内閣府のデータを基に、京都大学大学院工学研究科藤井聡研究室作成

こうして見ると、政府部門の黒字化とは、バブルの発生と併存していることがわかる。財政の黒字化とは、バブルの裏返しであり、けっして望ましいことではないのだ。

財政悪化の原因は、ひとえに不況

さて、「国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0」という構造の下で、国内政府部門の収支を改善するには、どうしたらよいのだろうか。

政府は「税率」を上げることはできる。しかし、「税率」を上げたところで、「税収」までも上げることはできない。なぜなら、政府の税収は、経済全体の景気動向に大きく左右されるからである。政府は、財政支出を削減することもできるが、やはり税収が減ってしまえば財政収支は改善しない。

要は、すべて景気次第なのである。だから、増税や歳出削減によって財政を健全化しようとしたところで徒労に終わるだけなのだ。

日本においては、1990年代初頭から今日に至るまで、財政健全化の試みが繰り返されてきたが、財政は基本的に悪化し続けてきた。しかし、それは政府の無駄な支出増のせいではなく、税収の減少と社会保障費など経常移転支出の増加のせいであり、そうなった原因はひとえに不況にある。

この20年の間に欧米諸国の名目GDPは2倍以上になった。もし日本が欧米並みに成長していれば、それだけで現在の名目GDPは1000兆円を超し、社会保障の財源など問題にすらなっていなかったはずだ。

景気が悪ければ、財政当局がどうあがいたところで、政府部門の赤字を減らすことはできないのだ。

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