企業の採用担当者が語る「面接は機能不全」 10人いたら2人トンズラ

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──定番質問はしてほしいわけですね。

建設:そういう質問を大事だと思っているので、答えていないのに採用されると「補欠じゃないか」「幹部候補になれない」と悩んじゃう。マニュアルは嫌いだけどマニュアルで聞いてくれと、二律背反なんです。

IT:不思議なのは、内定を伝えると「御社に行きたいんですけど、やりきりたいんです」と言う学生が多いこと。「やりきるって何?」って聞くと、その業界で一番難しいと言われている会社まで「受けきりたい」と。

人材:あるある。「御社が第1志望です! でも8月まで待ってください」って、それ、第1志望じゃないでしょう。

金融:受験と同じ感覚なんですね。小さい頃から「将来どんな人生を送りたいか」「どんな仕事に就きたいか」と考える教育をされずに、目の前の受験で偏差値の高い学校に行く、というのを繰り返してきている。だから、就職も一番人気の会社を受けきらなきゃ、という発想になるんです。

建設:主体的な価値判断がないので、複数の内定をそろえて、親や大学の先生に決めてもらおうとする。それで「僕自身は御社に行きたいんですけど親や先生が他社を薦めるので」と内定を断ってくる。「あれ、誰の人生なの?」って思います。しかも断る口実として言ってるというより本当に自分で決めきれなくて、「迷ったんでやっぱ大学院に行きます」というのも多い。自分の勘も信用して、多分この会社がいいはず、いいことにするように頑張ろうという意識は希薄ですね。

親の言うことはきくな

──就活も、変わらなければいけませんね。

IT:乱暴かもしれないけど、出口の部分、つまりもっと簡単に会社が社員を解雇できるようにしないとダメじゃないかとさえ思います。学生も「就職したら一生」の前提だと慎重になるし、嘘でも盛ってでもなんとか入ってやろう、となる。企業側もヘンなやつを採って辞めさせられないと大変だし、確実に稼いでくれるやつを採れということになって、化かし合いになる。

外資:確かに外資は、定年まで勤める人なんていないし学生もそのつもりなので、「将来どうしたい?」と聞くと、みんな正直に「起業したい」とか「早くスキルをつけて次に進みたい」って言いますよ。やっぱり、終身雇用が前提の日系企業のほうが嘘が蔓延しやすいでしょうね。

金融:僕も最初に就職したのが外資で、採用はザルでした(笑)。合わないと早い段階で自ら辞めていくし、二つくらいプロジェクトをやってそこで評価が低いと「キミ、向いてないよ。ただうちは優秀なやつしか採ってないから、他社に行けば活躍できるよ」ってクビになっちゃう。外資は雇用の流動性がすごくあるので、採用にはそこまで力を入れないですよね。

IT:いまの学生は大手志向で、定年まで働きたいというマインド。雇用の流動性を高めるのとは逆方向になってますよね。やっぱり入り口の就活だけじゃなくて、出口も合わせて仕組みを変えていかないとダメなんじゃないか。いまの学生は平均寿命が100歳くらいになって、80歳くらいまで働かないといけない。「60年間同じ会社って気持ち悪いだろう」と言いたい。

金融:60年安泰な会社なんて超レア。だから、親の言うことを聞いて、いまの時点で良さそうに見える会社に入るなんて、ダメですよ。徐々に、通年採用の会社が増えたり、大学1年でも内定を出す会社が出てきたりと採用も多様化している。受験と同じように「一斉に就活」というスタイルが崩れれば、もっと早い段階から職業意識を持つようになるでしょう。5年、10年かかるかもしれないけど、そっちに向かってほしいですね。

(構成/編集部・石臥薫子)

AERA 2017年3月27日号

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