欧州でも胎動見せる「大衆迎合主義」のうねり オランダの「EU離脱」は避けられたが

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今回の総選挙も、極右的な政策が目立つトランプ米大統領の誕生で、欧州の極右政党には有利に働くのではないかと予想されていた。しかし、現実的にはトランプ新政権が移民排斥や入国制限を打ち出しながらも、司法からストップがかかり、国民からも猛反発を受けて混乱の極みに至っているのが現実だ。極右政党の危うさに直面したオランダ国民が、われに返ったと言っていいのかもしれない。加えて、自由党が主張するイスラム教徒排斥は、憲法違反に当たることも指摘された。

また、総選挙直前に行われた討論会で、ルッテ首相がウィルダース党首に対して「EU離脱がどれだけの代償を払うことになるのか」と警告したことも大きな要因になったとされる。オランダのような小国が、EU離脱を決行すれば、その犠牲は計り知れない。

問題は、今後続くフランスの大統領選挙と総選挙(国民議会選挙)、そしてドイツの連邦議会選挙だ。とりわけ、今後のEUの命運のカギを握ると言われるのがフランスの大統領選挙だ。反EUを掲げる極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が支持率ナンバーワンを堅持している。もっとも、過半数は取れないから決選投票となり、最終的にはルペン氏以外の候補者の勝利になるのではないかと予想されている。

ブレグジットの国民投票、トランプ米国大統領選など、ここ最近は予想を裏切る投票結果が出ているため、何とも言えないが、仮にルペン氏率いる国民戦線が勝利するようなことになれば、EUは事実上崩壊すると言っても過言ではないだろう。

一方のドイツも、難民の受け入れに反対する「AfD(ドイツのための選択肢)」の支持率は2割には届かず、メルケル首相の「CDU(キリスト教民主同盟)」や、同じキリスト教系の「CSU(キリスト教社会同盟)」と合わせた支持率(約3割)にはかなわない。CDUが第1党を維持してメルケル首相が再任されるかどうかは微妙だが、AfDが第1党に躍り出る可能性は低そうだ。

「移民」は経済成長に不可欠? ポピュリズムを生む?

なぜ世界中でポピュリズム政党が台頭してきているのか。ポピュリズム(大衆迎合主義)というのは、いわゆる超保守主義的な政党が、国民の「本音」の部分に語り掛けてエリート層を攻撃し、選挙民の弱みに付け込んで票を伸ばす政治手法の一種だ。第二次大戦前のヒトラー政権やイタリアのムッソリーニ政権がその典型とされる。

この言葉が注目されたのは米国トランプ大統領の選挙活動中の言動からで、フィリピンのドゥテルテ政権も広義では大衆迎合主義なのかもしれない。また、英国のブレグジットを成功させたのも、保守党の中の極右グループが採ったポピュリズムだった。

日本の安倍政権も、もともと保守である自民党の中でも極右グループのリーダーである安倍晋三首相が、自民党の多数派工作に成功し、それ以来「憲法改正」をとおしての超保守政権を維持している。

極右であるかどうかは、その国によっても事情は異なってくるが、いくつか共通項がある。トランプ米大統領の例を交えながら簡単に紹介すると、次の4点だ。

●国粋主義……「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン」と叫ぶ姿は、まさに国粋主義的な考え方であり、国粋主義が高じて軍国主義に向かうのがよくあるパターンだ。あるいは、過去の歴史を認めたがらない、もしくはなかったことにする「修正主義」もこのカテゴリーに入る
●排他主義……メキシコ国境に壁をつくる、のもそのひとつであり、トランプ政権が再三トライしている移民排斥や入国制限も排他主義のひとつだ。オランダの自由党、フランスの国民戦線なども、排他主義を前面に打ち出している
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