あの人が、指示しても動かない「本当の理由」 「一緒にやる」のひと手間が、成果につながる
「整備作業のひとつに、エンジンの加速試験というものがあります。わずか1秒間でスラストレバー(車であればアクセルにあたる)を離陸段階まで上げて、エンジンの加速時間が規定値に入っているかを確認するもので、未経験の整備士は、当然おっかなびっくりになります」
そこで宮崎が考えたのが、「やってみせる」の3ステップです。
(2)感覚を得るまで一緒にやる
(3)相手に任せる
「まずは、自分が『こうやるんだよ』と言って実際に作業を行い、手本を示します。次のステップでは相手にやってもらうわけですが、このとき、自分も手をレバーに添えるようにします。相手はいきなり任せられると、緊張してレバーを止めてしまうおそれがあるため、止めずに最後まで上げきる手伝いをするのです。何度かこのステップを繰り返し相手が感覚を身につけたら、自分は離れて1人でやってもらいます」
「手本を示す」という1番目のステップで作業の仕方を知識として理解してもらうだけでなく、2番目のステップ「感覚を得るまで一緒にやる」ことで、作業を体で覚えてもらうことができます。このひと手間をかけたうえで、初めて相手に任せることが大切なのです。
「自分は手本である」という自覚をもつ
後輩は、いつどんなときであっても、先輩のことを見ているものです。そして日々の仕事のなかで、先輩の仕事の仕方や姿勢を見ながら、「ここまでするのか」、あるいは「こんなものでいいのか」などと、驚くほどまねをしています。
あなたが朝ギリギリに出社していれば、後輩もギリギリに来るでしょうし、あなたがダラダラ残業していれば、後輩も残業をやめません。後輩は、あなた自身の鏡です。指示しても後輩ができないのは、先輩ができていないからなのです。
30年以上客室センターに在籍するCAで、ANAビジネスソリューション人材・研修事業部副部長の石山由美香は、「手本を示す側に立つ人は、日々、細かいところまで気を抜かない意識をもつことが大切です」と話します。
「指さしによる荷物入れのロック確認などの基本動作をあいまいにやっていると、入社して間もない社員に『訓練センターでの研修では徹底するよう言われていたのに、それほど意識することではないんだ』と思われてしまいます。機内は静かに歩く、笑顔を絶やさないといった基本的なこと、小さなことほど、つねに見られていることを意識して仕事に取り組む必要があります」