あの人が、指示しても動かない「本当の理由」 「一緒にやる」のひと手間が、成果につながる
「やってみせる」の3ステップ
あなたが後輩の仕事の進め方について、気づいたことがあるとします。たとえば、「電話の受け方をもう少し丁寧にすればいいのに」とか「資料に頼りすぎたプレゼンテーションをしている」といったことです。
こうしたとき、口頭で「電話の受け方を、もう少し丁寧にするといいよ」とか「資料に頼らずプレゼンしよう」というアドバイスをしている人が多いかもしれません。
でも、あなたには当然のようにできることが、後輩にとっては難しい場合も多々あります。そういうときに有効なのが「やってみせる」というシンプルな方法です。
空港センター旅客サービスチームで、全空港の国際線グランドスタッフのインストラクターを務める上部真理は、海外の空港で働くスタッフにグランドスタッフの業務を指導してきました。
「たとえば接遇マナーのひとつとして、私たち日本人は意識することなくお辞儀をすることができ、その意味を理解しています。異なる国籍のスタッフにはその意味や方法がわからず、アイコンタクトしたままぎこちなくなってしまう人もいます。そういうときは、『日本のおもてなしとは……』と言葉で説明するだけでなく、何度もお辞儀の手本を示しています。実践を通して、日本人が大切にしている礼儀正しさや清潔感を理解してもらうのです」
ただし、「率先して見本となることが重要」とはいっても、すべてを先輩がやってしまっては、何の意味もありません。40年以上整備部門に在籍し、ANAビジネスソリューションでヒューマンエラー対策講師も務める宮崎志郎も、難しい作業ほど、後輩にどのように実行してもらえばいいか悩んでいたと言います。