「テロ対策特別措置法」期限延長の問題は、国際貢献のあり方から議論すべし【2】
【2】 警察派遣ミッション
また、EUが警察派遣ミッション(160名を予定)を計画中です。これに、わが国も参加することができるようにすべきと考えます。
PKO協力法上、日本はアフガニスタンへの物資協力は対応可能ですが、アフガニスタンに警察などを派遣することはできません。それは、アフガニスタンにはPKO協力法上の「国連PKO」が存在しないため、同法の「国際連合平和維持活動」としての警察派遣ができず、また同法の「人道的な国際救援活動」に警察派遣が想定されていないからです。
つまり現状では、EUの警察派遣ミッションと共同歩調をとることはできないのです。
私は、人道支援について、「日本人の顔が見えるようにすべき」と考えています。「人道的な国際救援活動」において警察派遣を実施できるようにし、さらに「紛争当事者間の停戦合意」がなくとも人道的支援に参加できるよう、PKO協力法3条2号及び3号を改正すべきだと考えます。
【3】 医療、食料、建設等の生活支援
この6年間に、アフガニスタンの国内は荒廃し、食料自給率も4割まで落ちています。医療体制も崩壊するなど生活が困窮する中、テロはますます広がっています。こうした状況下で日本は率先して、医療、食料の提供や社会インフラの建設を行い、アフガニスタンの方々の生活を向上させ、テロ撲滅に根底から取り組むべきでしょう。
JICAの経済協力制度やPKO協力法の物資協力制度を使えば、これには十分に対応可能です。これまでJICAはアフガニスタンにおける「結核対策プロジェクト」で国立結核研究所を修復しました。また学校の建設や教師研修プログラムで、数万人の子供たちに教育の機会を提供しています。
現状でも約50名の日本人がJICAやNGOのプロジェクトで、アフガニスタンにおける活動を継続しています。
これまでJICAは、農村開発プロジェクトを通し、カンボジアやモザンビークで除隊兵士に対する市民社会への復帰を支援してきた経験があります。農業の支援は、麻薬であるケシの栽培に走る農家の人々を作物の栽培に呼び戻すためにも必要な活動といえます。
私はカンボジアを訪問し、JICAの方々の活動を実際に聞きました。PKO活動ともどもJICAの活動は現地で大きな評価を得ていました。また東ティモール、スリランカ、カンボジアにおいては、同国の研修員を日本に招聘し、警察制度の研修を実施したり、治安維持の専門家育成も行っています。
【4】和平交渉の支援
パキスタンでの報道によると、アフガニスタンとパキスタンの部族長や宗教指導者が2007年8月9日から12日までに会合を行い、両国からそれぞれ25名の代表を選んでタリバンと和平交渉を進めることが決まったようです。
6月30日には藩国連事務総長がアフガニスタンのカルザイ大統領と直接会談し、和平交渉が行なわれたのではないかとも言われています。カルザイ大統領は9月9日、アフガニスタンのテロを終わらせるためにタリバンと和平交渉する用意があると表明しています。
わが国には、こうした和平交渉を支える役割も担えるのではないでしょうか。カナダやスウェーデンが行っている仲介外交というのも、ひとつの道かもしれません。
藤末健三●ふじすえ けんぞう
1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。
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