「テロ対策特別措置法」期限延長の問題は、国際貢献のあり方から議論すべし【2】
わが国のあるべき対応とは
こうした状況下で、わが国は何をすべきでしょうか。
引き続きインド洋上で、「国連に感謝はされているが認められていない多国籍軍」に燃料や水を提供することも必要かもしれません。しかし、やはり憲法前文にあるような「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れる」ことの理念を、アフガニスタンでも実現するよう日本は動くべきだと私は考えています。「恐怖から免れる」には、武装の解除や警察機構の確立といった治安維持は不可欠です。また「欠乏から免れる」には、まず食料と医療、次に農業や産業の整備が必要になります。こうした分野でのわが国のアフガニスタン支援の実績はトップです。この動きをさらに加速する必要があります。
アマルティア・セン・ハーバード大教授は、「テロの根本的な原因は貧困にある」と指摘しています。テロを根本的になくすには、武力による掃討作戦よりむしろ、食料・医療支援によるアフガニスタンの人々の生活の安定しかありえないのです。
では以下に、日本が貢献できる具体的活動について、私の提案を四つ紹介します。
【1】 治安維持への貢献
DDRとは、元兵士の武装解除・動員解除、社会復帰(Disarmament, Demobilization and Reintegration)のことです。わが国はこれまでUNAMAの下でDDRを行ってきました。
DDRは2003年10 月に開始され、アメリカ国防省傘下の旧国軍約6万名の武装解除に至り、2006年6月末に完了しました。この成果は、他国からも高い評価を得ています。
そして、現在、国防省に属さない非合法武装集団の解体(DIAG)も開始されています。実際にアフガニスタンでDDRを担当した伊勢崎東京外語大教授によると、状況は以下のとおりとのことでした。
・ 2004年にアフガンの大統領選挙における投票の安全性を確立するため、アメリカはアフガンに地方警察官を大量生産した。地方警察は内務省の所管で、国防省傘下の軍の武装解除はある程度進展したが、内務省傘下の警察機構の改革には未着手である。
・ アフガン警察は、古い軍閥時代の「腐敗体質」をそのまま受け継いでいる。元軍閥はマフィア化しており、ケシ(麻薬)の栽培も増加している。麻薬撲滅の戦闘(南部ヘルマンド州)も激化しているが、本当に「アル・カイダ」と戦っているかとの疑念も残る(地元マフィアが「アル・カイダ」を名乗っている可能性もあるため)
・ 抜本的な警察改革が必要な状況である。警察部隊の地域間の交換などで地元利権と警察のつながりを切る必要がある。
・ アフガンにおける反米、反NATOの世論は高まっている。これまでは米・NATOはタリバンと戦っていると世間は受け止めていたが、カブール市内でも米軍装甲車に対する一般市民の投石が発生している。
・ テロ特措法の継続により、今まで日本がDDRに対する協力などで培った「中立性」に対する信頼はなくなっていく危険性がある。
わが国としては、DIAGや治安・警察の改革(SSR:Security Sector Reform)を主導できますし、この活動によりテロ撲滅へ貢献をアメリカに理解してもらうことも可能です。伊勢崎教授は、「日本はDDRの実績があるため、SSRの協力であれば、アメリカのテロ掃討作戦に直接恩恵があるとの理解を得ることができる」と指摘されています。なお、このDIAGを含むSSRは、50億円くらいで可能ではないか、との見方でした。