政府と日銀、「景気回復」めぐる微妙なズレ
政府は景気「回復」明言に二の足

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7月24日、足元景気の回復基調が鮮明になってきたにもかかわらず、政府が景気の「回復」を明言することに二の足を踏んでいる。写真は2011年8月、都内で撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

[東京 24日 ロイター] - 足元景気の回復基調が鮮明になってきたにもかかわらず、政府が景気の「回復」を明言することに二の足を踏んでいる。

明確な景気の好循環メカニズムがまだ見られないためだが、異次元緩和を続ける日銀は政府よりひと足先に「回復」局面入りを宣言。安倍政権の発足以降、政策の一体感を常に強調してきた両者の間に微妙なずれが生じている。

政府の景気に関する公式見解となる月例経済報告。23日に公表した7月分では、基調判断を「着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる」として、3カ月連続で上方修正した。月例の基調判断に「回復」の文言が入るのは10カ月ぶり。昨年9月に「世界景気の減速等を背景として、回復の動きに足踏みがみられる」と表現して以来だ。

政府が基調判断に「回復」を復活させたのは、国内景気に「支出・生産・所得の好循環の芽が出てきた」(甘利明経済再生担当相)ことが理由だ。輸出の持ち直しに加え、消費・公共投資など内需の好調を背景に、生産が緩やかに増加し、企業の収益環境も次第に改善。さらに、遅れていた設備投資の一部に動きが出てきたことで、景気の循環メカニズムが少しずつ起動し始めたととらえた。

しかし、政府内では依然として「回復」局面入りの判断には慎重論が大勢で、今回の表現変更後も「回復しているとは言ってない」(内閣府幹部)と及び腰。一部で動き始めたが広がりに欠ける設備投資や、安倍晋三首相の意向を受けて経済界が対応を始めた賃上げの後も、賃金・所得の上昇が持続的となるかが、今後の「回復」を左右する鍵になるという。

一方、日銀は今月11日の金融政策決定会合で、景気判断を「緩やかに回復しつつある」として、2年半ぶりに「回復」局面入りを宣言済み。政府の月例では「緩やかに回復しつつある」との表現は、昨年8月を最後に消えたままだ。

政府関係者は「ニュアンスの違いだけ。基本的な判断は同じ」と説明するが、安倍政権の発足後、共同文書までまとめて一体感を演出した政府・日銀の間にずれが生じるのは珍しい。今後、両者の認識のずれが次第に広がれば、秋の消費税引き上げや今後のデフレ脱却をめぐる判断などにも微妙な影を落としかねない。

(ロイターニュース 基太村真司:編集 石田仁志)

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