これまでに比べてかなり前進しているが、ただ法律では3類型の中から1つずつ開示すればよいことになっているため、たとえば、「平均勤続年数」「研修の有無」「役員に占める女性の割合・管理職に占める女性の割合」の3項目だけを開示すればよし、という状況になる。もっと情報を求めたい就活生にとっては物足りなさを感じるだろう。
そんな中、リクルートキャリアが運営するリクナビは、2018年卒生向けの就職情報サイト内に、「積極的に職場情報を公開している企業」というコーナーを設置した。ここでは検索結果の表示順について、前述の13項目の開示項目が多い企業を優先的にする仕様にしている。情報開示姿勢の高い会社が上位にリスティングされる仕組みで、開示によるメリットを企業側にも実感してもらおうというのが狙いだ。
「そもそもリクルートは求人広告を通して、働く人の労働条件を向上させることを役割のひとつとしてきた。社内の営業マンも賛同し、掲載企業への協力も積極的に行っている」(リクルートキャリアの大西哲朗・IT戦略室プロダクトマーケティング部新卒ストラテジーグループマネジャー)
開示状況のいい企業は上位に表示される
給与などの待遇面でも情報開示は進む。全求協では特に固定残業代について厳格な表記を求めている。具体的には給与を固定残業込みの総額で記載する場合、「固定残業代の金額」「その金額に充当する労働時間」「固定残業代分以上の残業を行った場合の追加支給する旨」を記載することを企業側に求め、開示がない場合は掲載をお断りするように加盟各社に要請している。
そうしたことを受けて企業の採用情報では、給与項目の開示に変化が生まれているという。「これまで初任給だけの表示だったが、今年は基本給、住宅手当などの諸手当、固定残業代などの内訳を開示する企業が多くなっている」と谷出氏は語る。「賞与は基本給の2カ月分」というように、基本給はボーナスの乗率の基準となり年収にも大きく影響する。就活生も初任給の多寡ではなく、残業代や手当の額や会社の賃金体系について、さらに強い関心を抱いている結果だといえるだろう。
採用スケジュールは昨年と同じ、3月広報開始、6月選考開始と変わらないが、こうした職場の状況など、情報の部分では大きく変化している。企業の開示姿勢やその内容によって、企業が従業員をどれだけ大切にしているかが判断されるようになってきている。もしかしたら、この就職活動・採用活動を通し、日本の労働環境そのものが変わる可能性も秘めている。
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