SL列車の観光客が「一番感動する」のは何か 「トーマス」人気の大井川鐵道社長に直撃!

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――確かに、SNSだと双方向でコミュニケーションが取れますし、フォロワー数が多いとメディアとしての力も持ちますね。

前田社長にインタビューする久野アナ(撮影:今井康一)

そうですね。ただ、SNSの場合は「トーマス」の情報などよりもむしろ、コアな鉄道ファンに受けるような「旧型客車のこんなところを知ってますか?」とか、そういった情報発信のほうが広まりやすいという特殊性を持っています。いい意味で「ばかだな、大鉄は」と思ってもらうのがいいんですね。

たとえば、弊社の旧型客車に10時間以上乗って3往復する「長距離鈍行列車ツアー」とか、好きな人にはたまらない企画ですが、価値がわからない人には「なんだこれ」ですね。でも、そういった情報を見て、コアな方々が「また大鉄がばかなことをやってるぞ、でも行きたい」というような声が挙がってくるのが、とてもうれしいですね。

井川線、待望の全線再開!

――3月11日に井川線が全線復旧されますね。2014年9月の土砂崩れで一部が不通となってから長い道のりでしたが、やっぱり相当なご苦労があったのでしょうか。

そうですね。922日ぶりの再開です。治山事業が行われるまでに時間がかかりましたし、工事期間中にも台風などいろいろな条件がありましたので、やっと待ち望んだ瞬間が来ると思っています。

――待望の井川線再開を迎え、観光面での人気もさらに高まりそうですが、現在の課題はいかがでしょうか。

弊社は輸送密度で比べると、全国に90数社ある中小私鉄の中で60位以下です。同じような状況の鉄道会社は、三セクや上下分離、公的支援、もしくは他の鉄道会社の資本が入っているのがほとんどです。その中で、独立系の企業である弊社がなんとかやっていられるのはSLという武器があるためです。

いま、年間で約60万人のお客さまにご利用いただいていますが、そのうち約2割の方がいわゆる定期券を使われるお客さまです。ただ、全体の収入のうち定期利用の収入が何パーセントかというと、3%を切ります。収入のほぼ100%は観光収入で、そこを収益源としていかなければ、われわれはもう永続する責任を果たせないというのが実情です。

SLは鉄道の文化ですので、維持する責任はもちろんありますが、そのコストというのは非常に多額です。そういった意味で、いろいろな方面からの後ろ盾はいただきたいという思いが強いですね。SLによってお客様にお支払いいただける単価が高いからこそ生き延びているという現実を、沿線の方々や自治体を含めご理解いただき、観光面での経済波及効果や、地域の公共交通であるというところも含めて、ご支援いただきたいと思っています。

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