テレビ局の「ネット音痴」意外にも深刻な実態 「逃げ恥」大ヒットを大多数が学べていない

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テレビ業界のどこが“ネットオンチ”なのか? 3つの理由を挙げながら、現在の苦境と今後の対応策を挙げていきます。

なぜ「逃げ恥」はヒットしたのか?

その理由は脚本、演出、そして俳優の演技。すべてが高品質だったのは間違いありませんが、これまでも同等レベルのものは毎クール1~2本ありましたし、そもそも見てもらえなければそれに気づいてもらえません。ましてや、「逃げ恥」のような「恋愛ドラマは近年ヒット作がない」など視聴ターゲットが狭いため、見てもらうための努力が徹底されていたのです。

その中心を担っていたのがネットでのPR。まずは情報量を生み出すために、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、LINEと4つのSNSをフル活用。主演だけでなく、助演やスタッフなどを次々に登場させて、話題を提供しました。

新たな“恋ダンス”メンバーの投入、毎話10数分のダイジェスト動画作成、撮影裏話と現場写真の公開、放送時間に向けたカウントダウンメッセージ、クックパッドや横浜市とのコラボページ、TBS系列局からの地方発ニュースなど、視聴者が「思わずシェアしたくなる」「サクッとシェアできる」ネタを投入して一気に拡散。その盛り上がりを見たネットメディアが食いついて、次々に記事をアップするなど、“ドラマを見ていない人”とのタッチポイントを自然に受け入れやすい形で作り、新視聴者獲得につなげていたのです。

公式ホームページはあくまでそれらを集約する“「逃げ恥」ポータル”であり、「SNSへの投稿やネットメディアの記事を見た人が、結果的にたどり着く場所」というポジションでした。これは「多くのSNS投稿やネット記事を生み出し、商品ページやECサイトにつなげて、会社のホームページは集約場所にとどめる」という、一般企業のような形が取られていたのです。

「レコメンドされない」テレビ番組

ネットリテラシーの高いビジネスパーソンなら、「そんなにすごいことなの?」「普通でしょ」と思うかもしれませんが、これこそがテレビ業界の現実。これまでPRといえば、主演俳優を自局番組に番宣出演させる形がほとんどでした。いまだ「スタートの2週間前あたりから連日出演させ、初回当日は朝から夕方まで情報番組に出ずっぱり」という“押しつけ型”のPRを繰り返しているのです。

テレビ業界の人々は、ネットの普及で「押しつけられるのを嫌う人が増えている」ことに気づいていません。すでに人々の思考回路は、「自分たちが『面白い』と思ったものを発信し合い、周囲の反応を見つつも、何をして過ごすのかを決める」というものであり、テレビ業界の人々が思っているよりも、はるかに能動的。テレビは選択肢の1つに過ぎず、それどころか接触頻度はネットのほうが圧倒的に多いのが現実であり、これを認められないうちは効果的なネットPRが期待できないでしょう。

案の定、現在放送中の冬ドラマでは、「思わずレコメンドしたくなる」ようなネットPRは見られません。もし「逃げ恥」のネットPRが「特定の個人やチームの頑張りが生んだ」偶発的な成功だったとしても、「それを次につなげよう(他局なら見習おう)」「自局内の番宣はほどほどに減らそう」という動きが見られないところに、テレビ業界のネットオンチが見えるのです。

次ページPRのスタンダードを変えられなければ…
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