外国人と働く日本人にありがちな「勘違い」 米国人をストレートに批判するのはNG!

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――日本企業にも異文化に対する理解を深めようという動きはあるのでしょうか。

INSEADに企業から派遣されている日本人や日本企業に講義を行ったり、個人として日本企業にコンサルティングしたりすることはあります。日本企業がグローバルで戦うためのコンサルをすることもありますし、グローバル企業で日本人が働くために必要なリーダーシップについて教えることもあります。

たとえばこの間、複数の国の人が働くチームのリーダーに就いたばかりの日本人ビジネスマンに教える機会がありました。彼は日本での実績もあり、英語もペラペラ。しかし、彼はある米国人とコミュニケーションを行ううえであるミスを犯していたのです。

一般的に、米国人は日本人に比べてストレートにモノを言うと考えられています。しかし、米国では批判をする場合には、まずポジティブなことを言ってから、ネガティブなフィードバックを言うのが普通なのです。ところが、彼はそれを知らず、米国人の部下たちに悪いフィードバックだけをストレートに伝えていた。これに対して、部下たちは「リーダーシップに欠けるうえ、モチベーションにも悪影響を与える、傲慢な上司」と不満を持つようになったのです。

繰り返しになりますが、「米国人はストレート、日本人は遠回し」というステレオタイプだけに基づいて行動すると、痛い目に遭いかねません。

米国人は日本人のように空気を読めない

――そんなにフィードバックが大切なのですか。

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米国は「フィードバック大国」で、フィードバックの量だけでなく、その内容もかなり具体的です。それができなければ、人間的なコミュニケーションができない人と見なされかねない。

オーバーに言えば、「この部分はクリアだし、この部分もすばらしいし、この部分もよくできている。だけど、この部分だけは少し変えたほうがいいかもしれない。とはいえ、あなたと仕事するのは本当にすばらしい」というような伝え方が必要なわけです(笑)。

――日本人がそれに対応するのは労力がいりますね。

でも、それが米国人チームを率いるということなのです。米国人の部下が20人いたとしたら、一人ひとりにクリアで具体的なフィードバックを提供しないといけない。彼らは日本人のように空気や行間を読んだり、言わなくても理解できたりしないので、しっかりと伝えなければ喪失感を感じるのです。面倒かもしれませんが、外国人を束ねるリーダーになるのには必要なスキルです。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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