パタゴニア、アークも認めた!東レの「技術」 先端繊維を武器にアウトドア分野で存在感

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そこで東レは数年に及ぶ試行錯誤を重ね、独自の中綿構造を開発。らせん状にしたポリエステル繊維を使った中綿で、体の動きに合わせて繊維が伸縮する。引っ張れば伸び、手を離すと元に戻るバネと原理は同じだ。この特殊構造で中綿がカサ高になり、そこに多くの暖かい空気がたまりやすいため、一般的な化繊綿に比べて保温性も高くなった。

その中綿を包む表・裏の生地には、クリンプ(ちぢれ)加工で伸縮性を持たせたナイロンを使用。通気性をよくするために織りの密度を粗くしてあるが、中綿には立体的ならせん状の糸を用いているため、生地の間から飛び出す心配はないという。

ナノエアは2014年に商品化に至った。するとすぐにアウトドア専門誌などで大々的に取りあげられ、最大市場の北米を中心に大ヒット。こうした反響を受け、パタゴニアは春・秋用も発売するなどシリーズの品揃えを増やしており、早くも同社のアウトドア用テクニカルウエアを代表する商品になった。

本格アウトドア用途を強化

繊維ビジネスは今もなお東レの中核事業だ。「衣料分野」と「工業分野」の2つの柱があり、衣料分野だけを見ても先端ファッションやカジュアル衣料、スポーツ、ユニフォームなど用途は幅広い。ただ、衣料系は中国企業との価格競争が激しく、東レは高単価領域に戦線を絞ってビジネスを展開している。

そうした中で近年、衣料関連で戦略的に力を入れているのが本格アウトドア用途だ。スポーツ・衣料資材事業部の浅田康治部長によると、理由は2つある。まず第一に価格以外の要素で勝負できるのが大きな魅力だという。

「冬山や高山では着用しているものが命にかかわるので、一流のアウトドアブランドは安くても信頼性の低い素材は絶対に使わない。機能性と品質・信頼性が重視され、価格勝負のアジア勢と差別化しやすい」(浅田部長)。

東レが縫製まで手掛けるユニクロの超軽量ダウン(2015年11月、撮影:尾形文繁)

もう一つは、素材技術を磨く場としての重要性だ。軽さや薄さに加え、防風・防水、保温、速乾、透湿性など、本格アウトドア分野で求められる最先端の機能性素材技術は、他のスポーツウエアやファッション衣料などにも応用できる。たとえば、東レが縫製まで手掛けるユニクロの超軽量ダウンには、そうしたアウトドア用途での技術が活かされている。

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