パタゴニア、アークも認めた!東レの「技術」 先端繊維を武器にアウトドア分野で存在感

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ライバルは米国の素材メーカーだ。ハードシェルと呼ばれる雨・風をしのぐためのナイロン透湿性ジャケットでは、特殊な膜処理を施したゴア社の生地が圧倒的な実績を誇る。フリース素材はポーラテック社、化繊綿ではプリマロフト社が先駆的企業として高いシェアを握っている。

このため、本格アウトドア用途の素材メーカーとして、これまで東レの存在感は大きくはなかったが、ここにきて変化が起きている。パタゴニアでだけでなく、他の世界的な一流アウトドア・スポーツメーカーからの評価も高まっているからだ。

カナダのアークテリクスが採用拡大

急成長ブランドのアークテリクスも東レの素材採用を増やしている。写真は原宿ブランドストアの店内(記者撮影)

代表例がカナダのアークテリクス社。1991年設立とブランドの歴史こそ浅いが、機能性へのこだわりと洗練されたデザイン性が支持され、急成長を続けているアウトドア用品ブランドだ。パタゴニアと同様、熱狂的なファンが多いことでも知られる。

そのアークテリクスのウエア類に最近、商品タグと一緒に青色の小さなタグが付くようになった。「ARATO」または「TYONO」と記されたタグで、いずれもその下部には共通してこう書かれている。「Fabric by TORAY」ーー。

アークテリクスは近年、東レが開発した2種類の超軽量ナイロン(ストレッチ系と超高密度織りの防風性タイプ)を主力商品に相次ぎ採用。ダウンや化繊中綿のジャケット類、ウィンドブレーカーなどで使用し、該当商品には東レのブランドカラーにちなんだ青色のタグをつけるようになった。

アークテリクスの該当商品には東レの素材を使用していることを示す青色のタグが付くようになった(記者撮影)

アークテリクスのようなブランドが、ゴアやポーラテック、プリマロフト以外の素材メーカーの名前をこうした形でアピールする事例は珍しい。東レの技術を高く評価したからこそで、もちろん、東レとしては大歓迎。「アークは『日本のテクノロジーファブリックを積極的に使って、それを消費者にもアピールしていく』と言ってくれている。非常に光栄なことだ」(浅田部長)。

世界的なブランドとの取引拡大が牽引役となって、東レのアウトドア用途の売上高は過去5年間でおよそ1.5倍に増えた。「合繊の糸綿からテキスタイル(生地)、縫製まで一貫して手がける総合力が当社の強み。その強みを生かしてナノエアのケースのように、今までなかった新しい素材を世に送り出したい」と浅田部長は語る。

本格的アウトドアの分野で先行する米国素材メーカーにどこまで迫っていけるか。カギを握るのは一にも二にも技術力だ。
 

渡辺 清治 東洋経済 記者
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