習近平主席との電話会談は、トランプ大統領側が準備したものと言われており、ホワイトハウスの公式発表では多くは語られていない。しかし、トランプ大統領の最側近であるバノン首席戦略官兼上級顧問が会長を務めていた極右メディア「ブライトバード」には、トランプ大統領が「ひとつの中国」を認めるという方針の軌道修正をした詳細が載っている。
フリン氏辞任など、厳しい船出となっているトランプ政権だが、筆者は1月24日掲載の「トランプ就任演説は『超絶暗い世界観』の塊だ」において、一般選挙での集会演説のような演説を、大統領の就任演説でせざるを得なかったことに余裕のなさを感じたと論じた。また、就任演説直後から通常は紳士協定として大統領に与えられる100日間の「ハネムーン期間」もトランプ大統領には与えられない状況にあると指摘した。
いまだに閣僚人事が確定せず
実際、元気そうに見えるトランプ大統領だが、民主党による議事妨害にはかなりのフラストレーションを感じていることを、主要メディアでは数少ない支持派であり、友人でもあるFOXニュースのキャスター、ショーン・ハニティ氏にインタビューで明かしている。
就任から1カ月近く経とうとしているにもかかわらず、いまだに閣僚は完全に承認を受けておらず、先の安倍首相との会談の内容も抽象的なものにとどまったのは、そもそも各論を担当する閣僚が出そろっていないからだと指摘されている。しかも、大統領令を出した入国制限をめぐる議論は長期化の様相を示すなど、安全保障・外交政策は正直なところうまくいっているとは言い難い。
さて、前述の戦略論の恩師が会話の中で強調していたのは、国家間の戦略を考えるうえで重要な概念には、「バランシング」があるということ。大国の動きによって小国も戦略を変えるが、必ずしも大国にばかりなびくわけではないということだ。先週の会談で安倍首相がトランプ大統領から歓待を受けた背景には、軍事力では決して大国ではない日本がアジアの盟友として多くのアジア諸国と親密な関係を構築してきたことが大きい。大国である中国が拳を上げようとしたとき、中国よりも大国ではないからこそ日本を支援しようと思う国が多い。そんな考えをトランプ大統領ももっていたのではないだろうか。
トランプ大統領がロシアとの関係の良好化を遅らせることに加え、中国との外交戦略も大きく修正してきたことは日本にとっては好ましい展開ではない。もっとも、発効する可能性自体は途絶えたものの、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で培ってきたアジア諸国との関係性や交渉内容はこれからの3つの大国による「3次方程式」にも大きな影響を与えることは間違いないだろう。
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