キーマン辞任!危うい「トランプ外交」の行方

フリン氏辞任で安保・外交戦略はどうなる?

それでも、現在の世界情勢において最も重要な「3次方程式」(3国間の関係性)は「米国×ロシア×中国」であることは間違いないだろう。オバマ政権時、ロシアとの関係が冷戦後最悪の状況になったと指摘されていたなかで、その間にロシアは中国と接近した。通商上も、外交・安全保障上も、「3次方程式」の残りの2カ国が連携してしまうのは米国には極めて不利な展開となる。

ロシアが共産主義色を弱め、「ロシア正教を信仰する国」としてのイメージ戦略を展開しているなかで、イデオロギーとして引き続き共産主義で中華思想の中国は、米国から見て対立構造を描きやすい相手だ。さらには貿易赤字を縮小していくうえでも最大の貿易相手国でもある。米国民を結束させるための明快な対立軸としても、通商・外交・安全保障の面においても、ロシアと接近するというのは、一流の国際ビジネスマンらしい戦略であると考えられる。

対中政策で思わぬ「誤算」

まずは自らがロシアに接近することで、ロシアと中国の蜜月関係に入り込もうとしたトランプ大統領。しかし、対中政策において大きなミスを犯してしまった。

トランプ大統領は就任前、台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったが、これはトランプ政権のブレーンを務めているといわれる、親台湾派のヘリテージ財団が後押ししたものとも見られている。その際、「ひとつの中国に縛られない」という趣旨の発言をしたのである。その後、今月9日の習近平主席との電話会談では「ひとつの中国」を突如として認める軌道修正を図っている。

「ひとつの中国に縛られない」発言は、中国との交渉上のジャブとして放ったとみられるが、中国にとってこれは絶対に受け入れられない内容である。中国の有識者の間ではトランプ大統領がこの内容を下ろさない限り2国間の戦争にもつながりかねないと危惧されていたようだ。それだけ、中国にとって台湾問題は安易に触ってはいけない「センシティブ」な問題なのである。

筆者は現地時間14日夜、米シカゴ大学の恩師である戦略論の教授(親トランプであり、匿名を条件にコメントしてくれた)と食事を共にしていたが、同氏も「トランプ大統領が台湾を『取引材料』にしたことは、戦略論でいうと『勝利の限界点』を超えていた」と指摘する。つまりは、台湾問題は、中国にとっては完全に限界点を超えたものであり、妥協は不可能でもはや戦いを挑むしかない姿勢にさせてしまったのである。

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