将棋連盟、新会長就任でも止まらない「漂流」 棋士28人が残る5理事の解任を求める事態に

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6日の新会長就任の記者会見は、予定より1時間遅れて5時に始まった。新理事選任は、拍手で賛成多数を確認し10分ほどで決まっている。それなのになぜ遅れたのか。

その理由は、総会で「三浦九段の処分について厳しい質問が棋士から出た」(青野照市専務理事・九段)からだけではない。総会前に28人の棋士から、今回辞任しなかった残り5人の常勤理事の解任を図る臨時総会開催の請求が出されたからだ。

2016年12月の会見で谷川浩司前会長(右から2人目)は将棋連盟の決定的な落ち度を認めた。左隣が青野照市専務理事。今回、島朗氏(一番左)も常務理事を退任した(撮影:今井康一)

将棋連盟の定款14条2項では、10分の1以上の棋士による請求で臨時総会を開催できることになっているという。28人はこの10分の1を超える人数だ。請求された臨時総会の議題は5つ。青野専務理事以下、5人の理事の解任である。

将棋連盟の理事会は、佐藤九段を会長に選んだ後、この開催請求について議論。2月27日に臨時総会を開催することにした。1カ月に2回の臨時総会を開くのは異例事態と言っていい。

世にも珍しい「名誉回復策」

会見で佐藤新会長は、三浦九段の名誉回復の具体策を問われて、「対局環境を万全に整えること。4カ月以上対局から遠ざかっているので、集中できる環境を作っていくことだ」とした。別の質問の際には、思い出したかのように、「将棋のイベントに多く三浦九段に参加していただくこと」も名誉回復策として挙げた。

最大の名誉回復策は、連盟として三浦九段に直接謝罪し、そのことを世間に知らしめることだが、6日現在、連盟は直接謝罪をしていない。

佐藤新会長はこれまで務めていた棋士会(会長の下に属する会)の会長としての立場で「今年に入ってから、何もできなかったことを個人的に三浦九段に『申し訳ない』と直接謝罪した」と言うが、「個人的な謝罪」では名誉回復になりようもない。

逆に、記者から「『竜王戦が間近に控えている中、挑戦者に決まっていた三浦九段の出場停止処分はやむをえないものだった』というのが第三者委員会の結論なのに、一体、何を謝罪するのか」と問われると、佐藤新会長は「ここまで世間を騒がせたのだから、どこかに問題があったのかもしれない」と、まるで他人事かのように述べた。

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