将棋連盟、新会長就任でも止まらない「漂流」 棋士28人が残る5理事の解任を求める事態に

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「現役棋士が会長では限界があるのではないか。引退した棋士や外部の経営者が良いのではないかという意見があるが」との別の質問に、佐藤新会長は「非常勤だが外部理事がいる」と反論した。確かに非常勤理事には外部の者がいる。通称「チェアマン」の川淵三郎氏である。しかし、今回の不祥事で、外部の目をどのように働かせたかは不明だ。

佐藤新会長は「引退した棋士を会長にするのも一つの考え方」とする一方、「棋士が理事を選ぶシステムになっている。そこをどうするか」と問題提起した。「何がベストかはまだ議論を詰めていない」とし、「ベストな形があればそれに(徐々に)変えていけばいい」との認識を示した。

現役と外部のW会長が最善?

ただ、会見に同席した青野専務理事の考えは違っていた。外部からの会長招聘について、「20年前から言われていたこと」とする。そして「地方支部に現役棋士の会長が自ら行って『お願いします』と言うから動いてくれる面もある」と現在の仕組みを評価する一方、「理事で勝ちまくっている者もいない」と将棋連盟の激務が棋士の成績に影響を与えていることも認めた。そのうえで青野専務理事は、「例えばだが、現役棋士と外部出身者の2本立てで運営できればいいと前々から思っている」と持論を展開した。

小さな会見場には大勢の報道陣が集まった(撮影:風間仁一郎)

ナンバーワンだった谷川前会長と、ナンバースリーだった島常務理事が辞めた今、辞任せずに残っているナンバーツーの青野専務理事は座り心地の悪さを感じているようだ。

「27日の臨時総会を待たずして辞任するつもりはないのか」という東洋経済の質問に、青野専務理事は「解任の総会開催請求を出しているのは年配の棋士たち。若手の棋士も賛成するなら考える」「(不祥事対応以外にも)やることは沢山ある。それらを6月の任期までやる」と続投の姿勢を示した。

アマ名人として知られた谷川俊昭氏(谷川前会長の実兄)が、三浦九段の名誉回復のために署名運動を1月30日から開始するなど、将棋連盟の置かれている状況は厳しい。この署名運動の目標は4つ。「将棋界を正常な状態に戻す」「真実を明らかにする」「(週刊誌の取材に応じるなど不祥事のきっかけを作った)渡辺明竜王らに適正な処分」そして「三浦九段の名誉回復を」だ。

佐藤新会長はこの署名運動を「知っている」としたうえで「一つの提言としてありがたい」と述べた。青野専務理事は「渡辺竜王への処分を求める意見は今日の臨時総会で一つもなかった」とした。

ガバナンス(統治)を確立し、健全な組織に生まれ変わるには、数多くの課題が残されている。そして佐藤新会長は、残り5人の常勤理事の退任を求める棋士たちの声にどう応えるのか。今なお将棋連盟は漂流を続けている。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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