これからのネットには、もっとローカルなサービスが求められる−−井上雅博・ヤフー社長
−−ライセンス元の米ヤフーがグーグルと提携した
直接日本のヤフーとは関係ないが、あれは、がっつり一緒に組もうという話ではなくて、グーグルが集めた広告を米ヤフーが配信する、という提携だと聞く。テレビの世界でいうと、東京のキー局が、集めたCMをローカル局に流してもらって配信料を払うようなイメージではないか。残念ながら、グーグルの方が広告が集まる現実があるので、グーグルに集まった広告をヤフーを通じて流す、ということになっている……。結局、スポンサーがどこに集まるかが、ネットビジネスでもポイントになるということだろう。
−−米国とは対照的にヤフージャパンは好調。いっそジャパンが米ヤフーを買収するというのは?
たとえば、セブン−イレブンの場合は米国のライセンス元より日本の方が大きくなったので逆買収ということになったのだろう。だが、米ヤフーはヤフージャパンより規模は大きい。ライセンス元とライセンス先の規模がねじれている、という状況ではない。
−−親会社のソフトバンクがアップルのiPhoneを発売する。ヤフージャパンの対応は?
iPhoneの機能・サービスは、基本的にアップルが決めることなので、ヤフージャパンが日本に特化したサービスを載せるというのは難しいだろう。とはいえ、携帯電話は地域性が強いサービスなので、全世界共通の機能だけで済ませられるわけではない。当社としては、iPhoneという今までにはない携帯デバイスを生かしたサービスを開発していく考えだ。
−−何でもヤフー内に抱え込む戦略から、他サイトとの提携戦略を強化しているようだが
まずは、ヤフーに集まる顧客を、外部のパートナーサイトに流す、というモデルの強化・拡大に力を入れている。内容の充実したサイトであっても、利用者を集め、さらにそれをマネタイズ(収益化)するというのは非常に難しいことだ。ヤフーに集まる利用者をこうした良いサイトに流せば、パートナーサイトの利用者を増やすことができる。
また、広告を集めたり、配信したりするようなマネタイズの仕組みも、ヤフーには整っている。いわばネットのインフラ的な部分はヤフーに任せてもらえれば、パートナーサイトは、コンテンツやサービスの充実に集中することができる。
こうした提携戦略を拡大することで、ヤフーは広告配信機会の拡大、パートナーサイトはマネタイズの強化が期待できる。現在、ネットの全利用時間に対するヤフージャパンのシェアは約17%だ。外部サイトとは広告収入を折半するので、提携先の外部サイトが利用時間シェア換算で3割強程度になれば、ヤフーのサイト内の広告収入と外部サイト経由の広告収入が1対1になる。まだまだ外部サイト経由の広告は少ないが、これくらいの規模感にするのがとりあえずの目標だ。
−−ネット業界でも中国市場を強化する動きが目立つ
ヤフージャパンとしては、テリトリーが決まっているので……。
−−1996年の設立以来社長を務め、後継者に関しては?
最高執行責任者(喜多埜裕明氏)もすでにおり、具体的な業務では事業部長も20人ほどいる。日々のオペレーションでは、別に社長がいてもいなくてもという……。
−−中長期的なヤフージャパンのイメージは?
テレビに比べると、ネットの接触時間はまだまだ少ないと思っている。ネットとの接触時間をどんどん増やしていかなければならないし、その可能性は大きい。確かにパソコン経由では限界があり、今後10年を見たらパソコンでのネット利用は減るかもしれない。だが、携帯はもちろん、テレビやカーナビなどネットの利用を増やす可能性を持つ機器は増えている。シャープやソニーに対してテレビ用にカスタマイズしたヤフーのポータルサービスを提案、供給しているのは、そういった接触拡大策の一環だ。
ヤフーはこれまでニュースや株価情報などを充実させてきた。確かにこれらのニーズは高いが、ネットでは、これからはもっとローカルな、より生活圏にマッチした情報が重要になるのではないか。今はネットで閉じているサービスが非常に多いので、もっとリアルの世界とつながったサービスが求められていると思う。リアルとバーチャルの融合サービスを、こらからの5年10年で1つの柱にしたい。
(聞き手 山崎豪敏 丸山尚文 撮影:梅谷秀司)
プロフィール
いのうえ・まさひろ◆1957年生まれ、51歳。79年東京理科大卒、92年ソフトバンク入社、96年ヤフー社長
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