来年は1ドル=110円前後になっても驚かない FRBと日銀の「出入口戦略」が、円安を促す

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4月上旬に量的質的金融緩和が導入された際、筆者のところには海外投資家から問い合せが相次いだ。彼らはそれをバズーカ緩和と呼び、日銀が年60~70兆円ペースで供給することを決めたベースマネーがそのまま海外に流出するかのような幻想を抱いていた。しかも、近年存在感を高めた個人投資家のイメージが強いのだろう、ジャパンマネーと言えば、高金利を求めて新興国に殺到するに違いないと思い込んでいたようだった。

だが、現在、日本国債の主な保有者は銀行や生損保、年金などの機関投資家である。リスクテイクに積極的な個人投資家とは異なり、日本の機関投資家は世界でも最も保守的な投資家層の一つだ。首尾よくポートフォリオ・リバランスが生じた場合も、投資資金は新興国へ流入するのではなく、まずは円債から米国債などの主要国債券市場にシフトすると考えられる。

その際、当初は為替ヘッジ付きで、円安効果は乏しいかもしれない。だが、そこで可能になるのが、FRBによる出口戦略である。FRBの資産購入額の減額、更には将来的に資産売却が行われる際に、日銀の緩和を受け、日本から流出するジャパンマネーが米債券市場を支える。その結果、金融引き締めに伴う米市場金利の急激な上昇を押さえ込むことが期待されるからだ。

実は、同じことは、2004年からのFRBの引き締め局面でも見られた。その頃、拡大する世界的な国際収支の不均衡を背景に、アジアを始めとした経常黒字国からの外貨準備マネーが米債券市場に流入。米市場金利の上昇を押え込んだ。当時、FRB理事だったバーナンキ議長はこれを「世界的な貯蓄余剰論」と呼んだ。ただ、今回のFRBの利上げ局面では、むしろ自国通貨の下落に伴って、新興国は通貨防衛のための米ドル売り介入(米国債売却)さえ行う懸念がある。そこで期待されるのがジャパンマネー、というわけだ。

次ページ当面は方向感欠くが、来年はドル高円安
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