来年は1ドル=110円前後になっても驚かない FRBと日銀の「出入口戦略」が、円安を促す
ITブームとFRBの高金利政策が世界から投資資金を米国に引き寄せ、それが通貨制度や金融システムが脆弱だった国からの資本逃避を招いたのだ。99年に誕生したユーロ圏から米国への投資が急増したのも同じ構図で理解できる。アメリカの幸せは世界の幸せとは限らない。
それは2010年代後半にも当てはまろう。中国やブラジルなど新興国時代を象徴する国の株価が冴えない中で、今春、米株価が史上最高値を更新したのはその最初の前兆だったのではないか。
奇しくも、ほぼ時を同じくする今年4月、英米系格付け会社フィッチ・レーティングスが中国の格下げを発表。シャドーバンキング問題の深刻さを理由として挙げた。リーマン危機後、先進国がデレバレッジ時代に突入する中、中国などの新興国はレバレッジ拡大期に入った。だが、フィッチはその中国でのレバレッジ拡大が行きすぎたと警告したのだ。中国に限った話ではなかろうが、新興国のレバレッジ拡大が逆回転する(債務圧縮を強要される)時期に転じたのだろう。
米国株の史上最高値更新と中国の格下げ。今春に起こったこの2つのエピソードは、新興国ブームが北米ブームに切り替わっていく象徴的な出来事だったのではないかと思う。
日銀の量的質的金融緩和の効果
さて、ここで浮上するのが、なぜ米国の株価は「今春に」史上最高値を更新したのか、という疑問である。筆者はその答えは黒田日銀の誕生であると思う。今春と言えば、2月下旬に黒田総裁が決定的となり、4月上旬には量的質的金融緩和の導入に至った時期である。目下、円債市場などの混乱はあるものの、黒田日銀の金融緩和の狙いが円市場金利の低下と本邦投資家の海外投資を促し、為替レートを円安に誘導すること。その結果、円高デフレの悪循環を断ち切ることにあるのは明らかだった。
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