トランプの難民排除、知られざる意外な矛盾 オーストラリアからの受け入れは否定せず

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舞台は、オーストラリアの近隣の島国・ナウル島やパプアニューギニアのマヌス島。美しく透き通る青色の海に囲まれたこれらの島国で起こっている、難民申請者たちへの劣悪な待遇や人権侵害の実態を取材している。

彼らはオーストラリアへの移住を目指してイランやアフガニスタンからボートで海を渡ってきたものの、念願の国へ上陸する夢を叶えられることなく強制的に海上で拿捕され、これらの島国の収容施設へ移送されてきた。

これはオーストラリアの難民政策の一環で、島国にある収容施設はオーストラリア政府がナウルやパプアニューギニアに大金を支払い、民間業者などに運営をアウトソーシングしている。そこには難民として認定されているにもかかわらず、オーストラリアへの入国を許されずに、数年間にわたって収容されたままの人たちも少なくない。

収容施設内の取材は厳しく制限されており、これまで内部の実態を明るみにすることは困難だったが、エバ監督は収容所内部のスタッフなどの協力を得て、携帯電話などで内密に撮影してもらった映像などで、現実をあぶり出すことに成功した。英紙ガーディアンも昨年、8000ページに及ぶ内部資料を入手、子供への虐待などを含む2100件以上のトラブルや事件が発生していたと報じた。ジュネーブの人権委員会には、オーストラリアの難民申請者に対する処遇を批判した国際連合の報告書が提出されている。

国際的な批判を受け収容施設は閉鎖へ

こうした国際的な批判の高まりを受け、オーストラリア政府はナウルやマヌス諸島の収容施設を閉鎖する方針を固めた。一方、いったんナウルやマヌス諸島へボートで降り立った難民申請者を、彼らが本当に迫害を受けている正規の難民である場合でさえ、二度とオーストラリアの地を踏むことはできないとも宣言している。

オーストラリア政府はその理由を、ボートでの入国を手助けする密航業者たちを利することを避けるためだとしており、一度ボートでのオーストラリアへの上陸を試みた場合、永遠にオーストラリアへの入国を許さない強硬な姿勢だ。増え続ける収容者たちをどうするべきか。そこへ、救いの一手となったのが、オバマ政権時代のアメリカ政府だった。

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