外国人投資家が再び日本株を売り始めている 株価上昇の「当面の好材料」はなくなった?

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昨年の6月、英国が欧州連合(EU)離脱を決定し、日経平均が一時1万4952円まで急落したのは記憶に新しい。この際、信用取引を通じて空売りをしかけた投資家も少なくない。しかし、売り方の思惑に反して、その後の日本株は大きく値を戻した。通常、信用取引には6カ月間の期日があるため、12月下旬まで損失覚悟の買い戻しを迫られていた投資家も多い。

それを裏付けるデータがある。まず、2市場(東京証券取引所、名古屋証券取引所)の信用取引の売り残をみると、2016年12月第3週(12日~16日)に1兆円前後まで増えていたが、2017年1月第3週(16日~20日)には9100億円台まで減っている。

次に、東証1部の新高値銘柄数をみると、昨年の12月8日には328銘柄だったが、今年に入って1月4日は282銘柄、1月26日に186と、ジリジリと減少傾向をたどっている。やはり、2016年12月をピークに、売り方の「踏み上げ」(損失覚悟の買い戻し)を巻き込んでいた様子がうかがえる。海外勢の買いも鈍るなか、売り方の買い戻しも一巡したことから、今後の日本株は調整含みの展開になる可能性がある。

日本株の下値は限定的か

1月末の日経平均株価は1万9041円まで大幅続落した。東証1部の全銘柄の値動きをあらわしたTOPIXで見ても、33業種すべてが下落した。為替市場では、運用リスクを避ける動きから、一時113円台まで円買いドル売りが進んだ。

2017年に入っても日本株への期待は高かったが、日経平均は1万9500円前後で上げ一服となっている。終値ベースでは、大発会(1万9594円)が高値となっているうえ、1月の日経平均は前年末比73円安とマイナス圏に沈んでしまった。さらに、短期投資家の売買コストの目安とされる25日線(1万9223円:1月末時点)を再び下回ったことから、戻り売り圧力がじわじわ強まっている。

今後、テクニカル面では騰落レシオに注目しておきたい。同指標は一定期間(通常25日間)の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割り、特に株式市場全体の売られ過ぎや買われ過ぎを推し測るものだ。一般的に、120%前後が買われ過ぎ、70%前後が売られ過ぎとされるなか、足元の日経平均の騰落レシオは、95%とほぼ中立圏。ただ、1月31日の値下がり銘柄数は1500を超え、騰落レシオからみた限りでは、目先の底値圏へと向かいつつある。

2月のマーケットはどうなるだろうか。日本株の動向に影響があるのはやはり米国経済だ。まず1日には米連邦公開市場委員会(FOMC)、3日には同1月雇用統計が控える。完全雇用に近い米労働市場の伸びしろは限られており、株価の上昇要因にはなりにくそうだ。

また10日には日米首脳会談が開かれるが、自動車の通商交渉が焦点となる見通しで、米国側は日本に米国内でのさらなる雇用創出を求めてくることもありそうだ。とすると、これも日本株の上昇要因とはいえない。その後は、13日に米国の2016年10-12月期国内総生産(GDP)の1次速報が控えているが、4四半期連続でプラスとなるかどうか。プラスの場合は年率でどの程度になるかに注目だ。

一方、日本企業の四半期決算発表も、2月第2週(6日~10日)で峠を越える。仮に今2017年3月期末の想定レートを1ドル=110円と仮定すると、
日経平均の1株益(225銘柄を1つの会社に見立てた計算)は約1250円になりそうだ。

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2012年以降のアベノミクス相場における予想PERのレンジである14~16倍を当てはめると、1万7500(=1250×14倍)~2万円(=1250×16倍)のレンジが想定される。企業業績面でよほどの大幅上方修正でもない限り、利益確定売りが優勢になる可能性もある。ただ、年金基金の売買を反映するといわれている信託銀行が日本株を買い越しつつある。仮に1万9000円を再び割りこんだとしても、1万7500円までの下落は考えづらく、日本株の下値は限られそうだ。

さて、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では、「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のためにハンドブック(初級編①)を作成しました。前回大好評をいただいた基礎編に続く冊子です。無料で配布しておりますので、興味のある方は、NTAAのHPからぜひお申し込みください。なお、基礎編とあわせて2冊申し込むことも可能です。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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