千代田区長選、小池マジックの威力は健在か 東京都議選の前哨戦、その戦いの構図とは?

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与謝野陣営は午前10時過ぎ、神主を迎えてお祓いの儀式をとりおこなった。「第一声」は正午に神保町交差点近くで行われたが、石原伸晃経済財政政策担当大臣、丸川珠代五輪担当大臣、TOKYO自民党政経塾で与謝野氏を指導した深谷隆司元通産大臣や神保町に住む川口順子元外務大臣などそうそうたる重鎮が並んだ。

与謝野陣営の第一声の様子(筆者撮影)

街宣車の上で挨拶したのは、自民党東京都連所属の国会議員のほか、与謝野陣営の選対本部長なども含めて10人にも上る。叔父の馨氏からも激励の電報が寄せられ、披露された。

肝心の内田氏の姿は見えなかったが、その思いを代弁するような石川氏批判が応援弁士の口から発せられている。「(千代田区長は)都知事が決めるものではない」「5選目を目指す手あかのついた人がまだやりたいと言っている」。もともと内田氏と石川氏は“一蓮托生”の関係で、16年前に石川氏を区長にしたのは内田氏だった。しかしその後に2人は決裂し、4年前の区長選で激しく闘ったという因縁がある。そんな石川氏に負けることはできないため、内田氏は全力を尽くすだろう。その証拠に出陣式の与謝野陣営の動員数は、石川氏の動員数を上回っている。

石川氏の頼みは小池人気

一方で石川氏が頼みとするのが、昨年の都知事選で内田氏が率いた自民党東京都連を蹴散らして当選した小池知事だ。高い人気を誇る小池知事をもってすれば、高齢批判も多選批判も、そして前回の区長選で「これが最後」と宣言したことも全てクリアできるはずだ。

その石川陣営が告示日のメインとして位置づけたのが、同日夕方に有楽町駅前で行われた街宣といえる。ここには「椿祭り」出席の公務のために午前の出陣式に参加できなかった小池知事が参加した。

「実績のかたまりのような石川さんに、もっと働いてもらいたい」。首にテーマカラーのグリーンのスカーフを巻き、手には赤い椿の花を持った小池知事は、こう石川氏を持ちあげる。グリーンのジャンバーを着た運動員が配布したビラには、「幼稚園・保育園の一元化(全国初)」「歩きたばこ・ポイ捨て禁止(全国初)」「猫の殺処分ゼロ(東京唯一)」「待機児童ゼロ(23区唯一)」「18歳まで医療費ゼロ(23区唯一)」といった業績が並べられていた。多くの面で先駆的な仕事をしたというわけだ。

このうち大きな意味を持つのが小池知事も特に力を入れ、東京都の次年度予算に400億円も計上した「待機児童ゼロ」だろう。だが1月28日に東京青年会議所千代田委員会が開催した公開討論会で、五十嵐候補が「私の知り合いが10人ほど、希望の保育園に入れていない」と「隠れ待機児童問題」が千代田区にあることを指摘している。

石川氏は「公務」を理由に討論会を欠席し、ビデオ出演となった。だがこれは区長としての「公務」ではなく、小池知事の「希望の塾」の都議選対策講座に参加したためであることが判明している。公開討論会での石川氏の欠席を残念がったある参加者は、「石川氏はまもなく76歳になるから、2人の41歳と一緒に出たくなかったのだろう」と感想を述べている。

この欠席も、また小池知事が得意とするイメージ戦略なのか――。両陣営にとって負けられない戦いであり、激戦となることは間違いない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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