現地取材で分かった「反トランプ」の異常熱気 これはよくある普通のデモじゃない

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今回のデモでは、選挙戦でトランプがヒラリーに向けて放った「ナスティウーマン(嫌な女)」という言葉を使ったサインが目立った。その中で特にウィットに富んでいたのが「Nasty Women want FUN-damental rights」という一文だった。

ファッション広報の仕事をするクレアリー(左)と弁護士のティファニー(筆者撮影)

シンディ・ローパーの有名なヒット曲『Girls Just Want To Have Fun』とFundamental Rights (基本的人権)を巧みに合体させた標語だ。

段ボールにその言葉を書き、手に持っていたのは、ロサンゼルス在住の弁護士、ティファニー・ハンターだ。「トランプが任命した政府高官の顔ぶれを見ても白人男性が大多数。女性の意見が反映されそうもない。そして何より、トランプが今後任命する最高裁判事が保守派なのが心配。たとえば彼が保守派判事を2人任命したとしたら、今後、重要な判決の行方が大きく変わる可能性は十分ある」。

中絶が合法でなくなる?

最高裁の判決のうち、このデモ参加者たちの男女共が口々に「どうしても守らねば」と語るのは、44年間に渡って守られてきた1973年の人工中絶合法の判決だ。トランプはすでに「中絶反対派」の判事を任命する方針を表明しており、この中絶合法の判決が将来ひっくり返される可能性を危惧する声があちこちで上がった。

ティファニーの友人でファッション関係の広報の仕事をしているクレアリー・サラザーはこう言う。「トランプは私たちの大統領ではないと叫ぶ人がいるけど、選挙で勝った彼が大統領の権限を持つことは民主主義の名において尊重すべき。トランプタワーに多くの人々が訪ねて彼と面会したのも、私は別にいいと思う。ただ、彼は私たちの主張を代表しているわけではないから、女性の権利を守るため、声を上げないと取り返しがつかないと感じて、このデモに参加した」。

かつては共和党のストラテジストだったエレナ(筆者撮影)

「本来なら、彼が大統領として就任する前に、この規模のデモを実施して、法的手段に訴えても、就任をストップさせるべきだった」と語るのは、共和党のストラテジストとしてかつて働いた経験のあるエレナ・シーだ。

いざ就任式が過ぎた今、数十万人を動員し、デモをしても、トランプ政権はすでに走り出している。もう遅すぎるのでは、という声を彼女は何度も共和党の内部から聞いてきた。「それでもやっぱり何もしないよりはマシ。権力を監視する意味でも」と彼女は言う。

午後4時過ぎ、多くの人々が帰り始めても、道路の上の橋から車の流れに向かってサインを掲げ、ドライバーから多くのクラクションと声援を受けていたのが、イーストロサンゼルスで生まれ育ったエンジニアのジョナサン・オロスコだ。トランプ政権をナチス政権に例えたサインを手にした彼は「一刻も早くトランプを罷免に追い込まなければ」と語る。

メキシコ系米国人のジョナサン。トランプの罷免を要求(筆者撮影)

彼は、ヒトラーもかつて正式な選挙で国民から選出された政治家だったことを挙げた。

「ユダヤ人だって、まさか最初はあんな目に遭うとは思ってなかったはず。今後、われわれメキシコ系アメリカ人や、イスラム系アメリカ人たちが罪に問われる法案ができたとしてもおかしくない。人種差別発言を連発してきた大統領の下で、人種差別が正当化されていくかもしれない。これは本当に危険すぎる」

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