ホワイトハウスのホームページに目を光らせていたふたりは、メラニア夫人の経歴の記載に、彼女が制作にかかわったジュエリーがテレビショッピングチャンネル大手のQVCで買えるという情報がアップされていた事実も見逃さなかった。「LGBTが削除され、QVCがアップされた。これ以上、トランプを象徴する出来事ってある?」とパムが叫ぶと、周囲からも「そのとおり!」という声が上がった。
グロリアはさらにこう言った。「オバマケアが廃止され、薬代が払えず医療破産する私たちは、QVCのコールセンターで非正規労働者として働き、メラニア夫人がデザインした宝石を売って、口を糊(のり)するようになるんだろうな」。
QVCの3文字は、その後ホワイトハウスのサイトからは削除されたが、多くのデモ参加者が、削除される前のサイトの写真をすでにツイッターで拡散していた。就任式をテレビで見た感想を聞くと、グロリアは「トランプが自分の妻を扱う態度の端々から、今後、この国の女性たちをどう扱うつもりなのか、いまさらながらダメ押しされた感じ」と言う。
車を降りても、妻をエスコートせず、1人でスタスタと先に歩いて階段を上っていく新大統領の光景がテレビで放映され、話題となった。「そうそう、まるでジャパニーズワイフみたい!」という声が、パムとグロリア、そして周囲の女性たちから同時に上がった。「あ、気を悪くしたらごめんなさい。古い日本映画のシーンで、妻が夫の後を数歩下がって歩くシーンがあったけど、就任式を見ていて、あ、あのシーンと同じだ、と思ったの」とグロリアは恐縮しながら付け加えた。
数多くのメキシコ移民がアメリカを支えてきた
メキシコからの移民を両親に持つグロリアとパム。彼女たち自身は米国で生まれたアメリカ人だが、自己のルーツの深い部分は、メキシコにあると語る。違法移民の中にレイピストやドラッグの売人がいると語り、メキシコ国境に壁を立てて違法移民を追い出すと公約したトランプの言葉を聞くたびに、ダブルスタンダードを感じざるを得ないとパムは言う。
違法であれ合法であれ、数多くのメキシコ移民がアメリカという国家の下働きを長年担当してきた事実には変わりがないというのが、彼女の主張だ。
「ビバリーヒルズの豪邸の子守も、庭師も、道路工事現場や農場で働く労働者も、ホテルや飲食店の清掃係も、多くがメキシコや中南米からの移民。彼らをこき使うだけ使って利用し、出がらしになったら追い出し、壁を作る。このカリフォルニアで、それが現実的に通用すると思っているのだろうか」と言う。
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