地元テレビ局の報道によると、群衆の数はすでに50万人を突破し、さらに膨れあがっているという。ロサンゼルス市の人口が約400万人だから、人口の約13%がダウンタウンに集まっている計算だ。
市庁舎前に急ぐと、手作りのサインを持った女性たちとともに、多くの男性たちも声を上げていた。冬でも温暖なLAでは、ピンク色の毛糸の帽子を被っている人は少数だ。その代わり、各自、思い思いのファッションで主張していた。
オバマケア廃止のインパクトは甚大
「ストップ・トランプ」という赤いロゴをTシャツに印刷して掲げていたのは、ロングビーチに住むグロリア・スミス(52歳)だ。
トランプ政権が成立してちょうど24時間が経つ現在、彼女が最も心配し、恐れているのは、オバマケアの廃止だという。「オバマケアがなくなったら、現在求職中の私は、医療保険を失う。これは、病気をしたら死ねと言われているのと同じ」。
グロリアは英語教師だったが、職を失ってからここ1年は定職にありつけていない。トランプはオバマケア廃止を公約し、就任式の後、オバマケア廃止のための大統領令にサインをしたばかりだ。「今のアメリカで、52歳の人間が正社員の仕事をゲットするのがどれだけ難しいか。今の私にはオバマケアが命綱なのに」。アメリカで、雇用主を通して提供される医療保険に入るには、一定以上の規模の企業の正社員である必要がある。
企業の後ろ盾のない求職者や、フリーランスの場合、まともなカバー力のある医療保険に入るには、自腹で高い掛け金を払い続けるしかなかったが、多くの人々は、もしもの時の医療保険よりも日々の家賃を払うことを優先させてきた。
オバマケア導入で、失業しても医療保険まで一緒に失うことだけは何とか免れていたグロリア。彼女の友人はC型肝炎で治療中だが、オバマケアにより、その薬代はボトル1本当たり、3ドルの自己負担で済んでいるという。「その小さなボトルの薬の定価は何と4万3000ドル。もしトランプがオバマケアを廃止したら、この友人は肝炎治療を続行できず、死ぬ可能性もあるかもしれない」
グロリアの横に立っていたのは、同じロングビーチ在住のパム・ジャグ(56歳)だ。ふたりは今日のデモで初めて出会い、すっかり意気投合したという。
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