不妊治療の成功は、女性の年齢がカギ
――治療の現場で、卵子の老化に対する認識不足を感じていますか。
日本では、避妊に関する教育はかなり行われていますが、不妊予防と年齢の関係について、もっと伝えていく必要があると思います。年齢が高くなってから、子どもが欲しくなる状況はさまざまです。結婚後、ずっと子どもを欲しいと思っていてもなかなかできない、というケースだけでなく、結婚しても子どもを持たないという選択をした夫婦が、年齢を経るにつれて、やはり子どもが欲しくなった、といって受診されることもあります。少しでも早く受診を決断するよう促すには、年齢の問題を広く知ってもらわなければなりません。
――夫の側の理解を得ることも大切ですね。
また、男性側の認識も重要です。たとえば、年下の夫の場合、自分と同じくらいの年齢の友人には、まだ子どもが少なかったりすると、危機感は薄くなります。年上の奥さんが焦っても、夫の側の理解不足で、不妊治療の開始が遅くなってしまった、ということもありました。費用が高いと言われる不妊治療ですが、すぐに結果が出れば、費用も少なくて済みます。
不妊治療を受ける患者の3つの負担
――不妊治療は「つらい」と聞きますが、どんな負担があるのでしょうか。
ひとつは経済的負担です。健康保険も適用されないので、体外受精の治療費の負担はかなりの金額になってしまいます。それに、不妊治療では、支払ったコストに対する成果が保証されません。私も体外受精の患者さんから「いったい何回、治療を受けたらいいのですか」と尋ねられます。
「一般的には3回(周期)程度と言われています」と答えることはできますが、確実ではありません。体外受精を3回受ければ負担は100万円を超えるかもしれません。それでも、成功するとは限らないことが、問題を難しくしています。数百万円を払って車を買えば、その車は必ず自分のものになりますが、不妊治療で高い費用を払ったからといって、赤ちゃんを必ず手にできるわけではないのです。
2つ目が、身体的な負担です。排卵誘発剤を使うと、お腹が張るといった症状が出ることがあります。最近は自己注射もありますが、クリニックで注射を受けるなら、毎日のように通院しなければならないので、体力的にも、時間的にも大変です。
3つ目は精神的負担です。実はこれが最も重いかもしれません。普段は、とても明るく振る舞っている患者さんでも、体外受精がうまくいかなかったことを告げられれば、泣き出してしまうことは珍しくありません。不妊に悩み、心のつかえを抱えて苦しんでいる患者さんはたくさんいます。それでも、次に向けて頑張ろうという気持ちにならなければ、そこで終わってしまいます。
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