30代後半になると、女性の卵子の数と質が急速に低下する「卵子の老化」が、急増する不妊の原因のひとつとして、一般にも注目され始めている。日本の不妊治療の課題は何なのか。国立成育医療研究センター不妊診療科の齋藤英和医長に話を聞いた。
40歳以上の体外受精成功率は、せいぜい1割
――2010年に日本で行われた体外受精の治療回数は約24万回(周期)を数え、3年前(2007年)から1.5倍近くに増えています。日本の不妊治療が急増している背景には何があるのでしょう。
妊娠・出産を望む女性の年齢が高くなっているのが、最大の原因だと思います。当センターの初診不妊患者の平均年齢は39歳、体外受精治療患者の平均年齢は41.7歳です。若ければ、体外受精で出産に至る成功率は1回当たり約20%ですが、40歳では7%、44歳なら1%程度に落ち込みます。不妊治療で子供を持つことができる可能性も、34歳までに治療を始めて繰り返せば7割程度になりますが、35~39歳で4割、40歳以上では、せいぜい1割にとどまります。
――かなり厳しい数字ですね。
もちろん、医師としては年齢が高くなってからでも妊娠できる方法を探りますし、不妊治療の技術も向上しています。しかし、体外受精などの高度な不妊治療が増えることが、決してよいことだとは思っていません。費用面を考えても、1回の治療費を30万円、40代半ばの成功率1%と仮定すると、3000万円で1人が生まれるという計算になってしまいます。すべてに助成金が適用されたとしても、半分程度は個人負担になり、大変な費用がかかります。不妊治療をやめる理由には、「資金がなくなった」という声が多いのが実情なのです。しかも、努力をしても結果が得られないケースも増えています。
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