トランプの大転換で沖縄米軍は台湾へ移るか 「一つの中国」否定で見直される台湾の価値

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ならば、ボルトン氏の主張するように、米軍を台湾に再駐留させると、米中の合意に違反することになるのか。中国が強く反発するのは間違いない。米国内でも再駐留に反対の意見は少なくないが、合意に違反していると断言できない面もある。

米国はもともと、台湾をめぐり、地域の緊張が緩和するにしたがって米軍を撤退させる、という立場だったからである。中国もそのような米国の立場をしぶしぶだろうが認めていた。

ボルトン氏によれば、このときと現在の国際情勢は、一変しているという。そのとおりだ。中国の軍事力は毎年膨張を続け、いまや空母も保有し、海空軍の作戦能力は飛躍的に強化されている。中国艦隊は南シナ海や台湾海峡、東シナ海、太平洋まで進出し、時には日本列島を一周する。南シナ海や東シナ海では、無理な領土主張を行い、一部の岩礁では埋め立て工事や飛行場も建設。これらは米中国交樹立の1979年当時には想像さえできなかったことであり、現実に向き合うべきだとするボルトン氏の考えは、常識からはかけ離れているように聞こえるかもしれないが、的を射ている面がある。 

沖縄からグアムへの米軍移駐には協力している

またボルトン氏は、「台湾へ再駐留させる米軍は沖縄から移動させるのがよい」と提案している。台湾は地政学的に東アジア諸国や南シナ海に近いので、この地域の安全確保のためには望ましいというわけだ。「日米間の基地問題をめぐる緊張を和らげる可能性がある」とも述べており、東アジアの安全保障と日本による基地負担の軽減という、2つの観点から沖縄米軍の台湾移駐を提案しているのだ。 

仮に、そのような提案が米新政権から行われた場合、日本はどう対処すべきか。日本の安全保障の観点から、沖縄の米軍がほかの場所に移ることには抵抗があろう。だが日本としても、米軍の沖縄からグアムへの移駐にすでに協力しているので、台湾への移駐も基本的には賛成できるはずだ。

もちろん日本は中国との友好関係を損なわないよう、万全の配慮が必要だが、東シナ海や台湾海峡、南シナ海における緊張状態は中国が惹起(じゃっき)したことで、それに対処するための米軍の台湾移駐は、中国が冷静さを取り戻すきっかけになりうる。実際には中国が考えを改めることにならないとの見方が多いだろうが、目先の中国の反応にとらわれず、中長期的には緊張の緩和に資すると判断できるならば、賛成すべきだと思う。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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