トランプの大転換で沖縄米軍は台湾へ移るか

「一つの中国」否定で見直される台湾の価値

実は、台湾、すなわち中華民国も、かつては「一つの中国」の立場であり、中国、イコール中華民国、イコール”中国大陸プラス台湾島”とすることを目標にしていた。しかし現在は、そのような主張をしなくなっている。それは「一つの中国」の目標、すなわち、台湾が中国大陸を征服することなどありえず、政策目標として掲げるべきでない、と考えるようなったからだ。

現在、台湾の蔡英文総統は、「一つの中国」問題について極めて慎重な態度であり、賛成あるいは反対と、旗幟(きし)鮮明にすることを避けている。説明は難解だが、わかりやすくいえば、「一つの中国について台湾内部にコンセンサスがない現状では、政府として特定の立場に立つべきでない。民主的にコンセンサスが形成されるのを待つ」という考えだと思う。

これに対して中華人民共和国は、蔡総統がそのように態度をあいまいにしているのは腹の中で台湾独立を企んでいるからだ、と見なして激しく非難している。

米中国交で台湾からは米軍が撤退した

トランプ氏は米国政府の立場を変更したか否か。日本と米国はそれぞれ1972年と1979年に中華人民共和国と国交を樹立。そのときから「一つの中国」は問題だったが、日本は「一つの中国」を認めるとは言わなかった。米国は「中華人民共和国がそのように主張していることに異論を唱えない」と表明するにとどめた。日米両国とも「一つの中国」は意味不明であり、一部は明らかに現実でないので、それを正しいと認めなかったのだと思う。

「一つの中国の原則に縛られない」というトランプ氏の発言は、従来の米政府の説明と感じが違っており、中国は反発しているが、米国が立場を変えたとは単純に断定できない面がある。難解な解釈問題だ。また、トランプ氏は「一つの中国の原則も交渉の対象となる」とも言っているが、中国は交渉の対象にしないだろう。

そう考えると、トランプ発言自体はさほど深刻な問題になると思えないが、米新政権には、言葉の問題は別として、現実の東アジアの情勢に応じた対応策を模索しようとする姿勢がうかがわれる。

ブッシュ政権で国務次官や国連大使を務めた保守派論客であり、トランプ政権でも国務副長官になるとうわさされているジョン・ボルトン氏による、「米軍を台湾に再度駐留させるべきだ」という意見(1月17日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙)がその一例である。

台湾における米軍の存在は、1979年の米中国交樹立の際に問題となった。米国はすべての米軍を台湾から撤退させることに合意し、すでに実行済みだったが、それは1972年のニクソン大統領訪中時に上海コミュニケとして発表されたものである。

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