ライフネット・岩瀬大輔社長が語る「起業論」 ロジックと人の感情とで事業はできていく

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――勉強が好きだったんですか。

勉強というか、特に留学した時はいろんな会社のケーススタディを読んでいたんです。いろんな会社がどういうふうに成功しているのか、失敗しているのか、これを読むのがすごく楽しくて打ち込んでいました。

パワーポイントだけで100億円集める

――岩瀬氏はハーバード卒業後、28歳年上で生保最大手出身の出口治明氏(ライフネット生命・代表取締役会長)と戦後初めての独立系の生保、つまり既存の生保会社の関連会社ではなく、独自でライフネット生命を立ち上げました。立ち上げはスムーズにいったのですか。

我々の前に最後に免許が出たのが1934年だったんですね。振り返ると、決して簡単ではなかったと思います。

生保会社はやはり、たくさんの資本が必要なビジネスですので、まず資本集めが一番苦労しました。結果的に開業する時に資本金を132億円集めて開業したんですけど、これもまだ姿も形もない会社で、いわば「パワーポイントだけで100億円集める」という作業だったもので、それが大変苦労しました。

――何社にもプレゼンテーションして、そこから「岩瀬に懸ける」という方が出資してくれたんですか。

やっぱり皆さん、共通していたのは「こういう生保会社があったらいいよね」「自分も昔、そういうのが欲しかった」とたくさんの方が言ってくださったのが、よかったのかなと思っています。

――ちょうど資金集めの時がサブプライムローン問題などにぶつかって、苦労されたそうですね。

最後に50億円を振り込んでいただいたのが、2008年3月31日だったんです。ちょうど2007年秋ぐらいからサブプライムの問題が沸々と出てきて、2008年の3月で確か「BNPパリバショック」があって、同年9月にリーマンショックなんですね。

なので、最初は「投資する」と言ってくださっていた会社もみんな「申し訳ない。できなくなった」ということで、いろんな会社に断られながら、何とか金策と言いますか、会社を作るために必要な資金集めに奔走しました。

――何億っていうおカネを出資すると決断するのはある種すごいことで、しかもまだこれから事業が始まるところだから賭けみたいなところもあると思うんですけれども、それでも出資してもらうに至る決め手はどういうところなんですか。

皆さん企業ですので、主に事業会社から出資していただいたので、やはり会社として「そろばん勘定」といいますか、きちんと投資して、これが返ってくるっていう算段、そういうストーリーがロジカルに伝えられるのは、もう必須だと思うんですね。

ただ、やはりそれだけじゃないんだということに気づいて、やはり今度、担当者一人一人が社内でプレゼンテーションして、「こんな将来性のある会社なので投資したい」って言ってくださらなければならないんですよね。

そういった意味では担当者一人一人がワクワクして、「自分たちもこの大きな挑戦の一部でありたい」と思ってくださった会社が大体投資してくださったので、やはりロジック半分で、エモーションというか、人の感情とかパッションとか、そういったもので事業はできていくんだなということは痛感しました。

※「BNPパリバショック」について、2008年3月に発生したとする表現がありますが、実際には2007年8月に発生しました。

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