トランプ大統領を無視しすぎると儲からない 「嫌な奴」の主張も、すべては間違っていない

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大統領に就任したトランプ氏については、今後も一つひとつの言動で株価や為替が変動することを警戒する声も強い。だが、世間が「嫌いなやつの主張は間違ったものである」という先入観にとらわれ、政策の中身を客観的に吟味していない部分もあることを忘れてはならない。もし社会が「嫌いなやつの主張がつねに間違っているわけではない」という当然のことを受け入れ、客観性を増していけば、こうしたリスクは徐々に軽減していくことになるだろう。

当面、反トランプはマーケットでは「敗者」に?

トランプ大統領の登場前まで、世界はメディアが報じる「自由貿易こそが世界経済の成長をもたらす」という主張を、ある意味では当然のごとく受け入れてきた。確かに世界経済はGDPベースでは成長を続けている。しかし、その陰で、先進国を中心に、多くの人たちの従来型の「幸福感」は失われていたことも事実である。それが民主党候補者指名レースにおける「サンダース現象」や、大統領選挙における「トランプ現象」を生み出す原動力になってきた。

「そろそろ運が変わるだろうと思って、敗者の側に賭けてはいけない」。
俗に「マーフィーの法則」や「ラスベガスの法則」とも呼ばれるものには
こうした格言もある。

自由貿易推進の影で幸福感を奪われていった人々の目には、自由貿易こそが「敗者」に、そして盲目的に自由貿易を推進しようとする勢力こそが「抵抗勢力」に映っているはずである。当面はこちらが「勝ち組」の可能性もある。

「トランプ砲」ともいわれるトランプ大統領のツイッターによるつぶやきが、それなりに社会を大きく動かすのは、メディアが脚色して報じる情報に対する不信感が高まってきていることの現れでもある。トランプ大統領を擁護する気などないが、メディアが脚色してきた従来の情報に対して、多くの国民が「No!」を突き付け始めているということには、メディアはもう少し謙虚になるべきかもしれない。

少なくとも投資家が、トランプ大統領が当面の主役となる世界で生き残るための条件は、「嫌いなやつの主張は間違ったものである」という先入観を捨て、「嫌いなやつの主張がつねに間違っているわけではない」ことに気づくことのように思えてならない。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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