新幹線が「空を飛ばなくなった」新工場の秘密 検査日数の1日短縮をどう実現したか
ロボットの導入により、これまで2人がかりで約200分を要していた先頭部の研ぎ作業は40分に短縮された。田中工場長は「従来は車体の上に乗って研いでいたので、機械化で安全性は格段に進化した。(研ぎ作業も)均一にできるようになり、品質向上の点でも意味がある」という。
さらに、塗装そのものも変化した。新幹線では初という水性塗料を新たに採用。環境面では優れているものの、温度と湿度の管理が適切でないと美しく仕上がらないという水性塗料だが、塗装ブース内でこれらの管理を徹底することで採用を実現した。こちらもロボット化されており、1両全体を仕上げるのにかかる時間は、マスキング作業や乾燥時間なども含めて3時間強という。
このほか、パンタグラフやブレーキ関係の部品などを運ぶ無人の搬送装置(AGV)導入や、自動で出し入れのできる部品類の立体格納庫など、新ラインは機械化・自動化を大幅に推進している。
作業の工程を「一筆書き」に
だが、機械化や自動化だけで作業効率をアップさせたわけではない。この新ラインで重要なのは、作業の工程が「一筆書き」になったことだ。
従来のラインでは、車両の検修を行う建物に西側の一方向からしか車両の出し入れができなかったため、車両の入換作業を頻繁に行わざるを得なかった。また、車両から取り外した部品の検査を行う施設も構内に点在しており、運搬にも手間がかかっていた。「もともと蒸気機関車の検査工場だったため」と田中工場長は説明する。
新ラインでは、車両の検修を行う建物を東西の両方向から出入りできるようにし、西側で分解した車両を東側で組み立てるという一方通行のシンプルなラインを構築。部品の検修場も隣接した建物に集約した。車両や部品の動線を効率化し、さらに機械化や自動化を図ることで、検査期間の短縮を実現したわけだ。
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