新幹線が「空を飛ばなくなった」新工場の秘密 検査日数の1日短縮をどう実現したか

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検査期間が短くなれば、その分車両を営業運転できる期間は長くなる。「工程が短くなると、車両の運用が楽になる」と田中工場長。東海道新幹線の運転本数は年々増えており、たとえば今冬(12月1日~2月28日)間は冬の期間としては過去最多の3万2252本を運転する。その一方で、車両の編成数は2012年度末に133編成だったのが2015年度末には131編成となり、2本減少した。少ない本数でより多くの運用をまかなうようになったわけだが、検査期間の短縮は運用に余裕を持たせることにつながる。

検査期間の短縮や機械化が図られたことで、今後の工場運営はどのように変わっていくのだろうか。この点については「これから本格的に(工場の運用が)始まって、車両の品質や作業効率を見ながら若干の効率化ができるかと思っている」(田中工場長)という。

重要なのはやっぱり人の力

だが、機械化が進んだとはいえ、今後も人の力が重要であることは変わらない。「機械でもまるっきりオートメーションではない」(田中工場長)からだ。また、熟練を要する鉄道の現場で近年課題となっている技術の伝承についても「引き継ぐべきところは人間から人間にしっかり引き継いでいく」と田中工場長はいう。特に、工場に入ってきた車両にどの程度手直しの必要があるかの判断や、乗客の快適性に関わる部分の判断は人の目でなければわからない部分だ。機械化と効率化により、そういった部分に人の手を多く振り向けることができるようになるわけだ。

JR東海は現在、もっとも古い700系の置き換えを進めており、2019年度には全ての車両がN700Aタイプに統一される。2020年度には、次世代車両である「N700S」の営業用車両投入が始まる予定だ。

さらに、2027年度を予定している品川-名古屋間のリニア中央新幹線開業後は、東海道新幹線にも大きな変化が予想される。検査期間の短縮や効率化で、いずれは現在より少ない編成数で運用をまかなえるようになることも考えられるだろう。新しい検修ラインは、これから変化の時期を迎える新幹線を支えていくことになる。

ところで、新幹線ファンにとって気になるのは「次の工場公開イベントの目玉は何になるか」ではないだろうか。空飛ぶ新幹線に次ぐ浜松工場の「名物」は何になるか……こちらも注目だ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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