第1の問題は、需給ギャップ(GDPギャップ)は、経済政策を運営するための指針として信頼性が高くないということだ。内閣府は四半期のGDPが発表される度にGDPギャップの推計を発表している。これによれば、2013年1~3月期のGDPギャップはGDPのマイナス2.2%で、実質GDP523兆円に対して約11.5兆円の需要の不足があるということになる。物価の下落を止めるために、公共事業や輸出の増加で、11.5兆円分の需要を生み出せば良いのかと言うと、話はそれほど単純ではない。
経済の需給ギャップ(GDPギャップ)を推計するには、GDPの実績値と潜在GDPの推計値の2つが必要だ。
発表されている四半期毎のGDPの実績値にはどうしてもある程度の推計の誤差が避けられない。さらに潜在GDPについても、「日本経済の供給力の最大値」とする考え方と「平均的な供給力」とする考え方があるうえに、推計方法についても、生産関数を推計する手法、HPフィルターという手法で最近のGDPの実績から推計する手法、オークンの法則を使って失業率から推計する手法などいくつかの手法がある。
こうした違いによって、推計で得られるGDPギャップの規模はかなり異なる。著しく大きな需要の不足があれば物価下落を引き起こしやすいことは確かだが、例えば内閣府が推計しているGDPギャップがゼロという水準が、必ずしも最初の説明の需給曲線の均衡点に相当するという訳ではない。
インフレが起こる原因は供給力不足だけではない
第2の問題は、インフレが起こる原因はGDPギャップで供給力不足が発生しすることだけではないことだ。需給曲線による説明では、コスト・プッシュ型でもディマンド・プル型でも、需要が供給を上回って物価の上昇がおこるというメカニズムは共通である。
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