「同一労働同一賃金」で賃金水準は上がるのか

高齢化による非正規社員の増加が問題

非正規社員の増加は全体の賃金の平均水準を押し下げる要因となることは明らかだが、人口動態が賃金に与える影響はそれだけではない。年齢によって賃金の水準が異なるため(賃金カーブ)、これも考慮する必要があるだろう。相対的に賃金水準の高い世代の割合が増えれば、全体の賃金を押し上げる要因になる。

これらがどのようなバランスで賃金水準を変えていくのかは複雑だが、賃金カーブが(正規社員・非正規社員ともに)今後も変わらないと仮定し、人口の年齢構成の変化が賃金に与える影響だけに絞って試算すると、2022年までは賃金水準が上がるが、2023年以降は減少に転じるという結果になった。

高齢者の所得ジリ貧で、日本経済は停滞

足元では右上がりの傾向のある賃金カーブによって高齢化が賃金水準を押し上げる効果が強く出ているようだ(賃金の低い若年層が減ることで、平均の賃金水準が上がる影響)。一方、2023年以降は非正規社員の割合が増えることが、全体の賃金を常に減少させる要因のほうが影響が大きくなる。

これらを勘案すると、人口の年齢構成の変化は今後の家計の所得に対してネガティブな影響が大きそうである。家計の所得が伸びなければ個人消費の停滞は続き、デフレ脱却もままならないだろう。同一労働同一賃金の政策を進めるだけでは対策として不十分であり、少子高齢化による非正規社員の増加を食い止める必要がある。高齢者の所得がジリ貧となれば、今後拡大が見込まれる医療・介護などの「高齢者向けビジネス」の収益性も上がらない。定年退職年齢の引き上げなどが有効と考えられるが、企業の負担は大きくなる。高齢者が若者の雇用を奪っては何の意味もない。

リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの「ライフシフト100年時代の人生戦略」で議論されているように、高齢化による影響は多岐にわたる。日本経済の長期停滞はメインシナリオと言わざるを得ないだろう。

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