【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第1回)絡み合う緊急課題(前編)
例年サミット前には財務大臣会合、外務大臣会合が開かれるが、今回はこれに加え3月以降気候変動、開発、労働、環境、エネルギー、科学技術につき大臣会合が日本で次々と開かれ、サミットへ向けての準備が行われてきた。この他、ローマの世界食糧サミット、ボンの生物多様性と気候変動会合においてもG8サミットを念頭に協議が進められたが、必ずしも当初期待された合意への見通しを得るには至っていない。食糧サミットで日本は「食糧輸出規制の自粛・撤廃」と「食糧と競合しないバイオ燃料の推進」の2点についての合意を目指したが不発におわり、G8サミットへの足場は築けなかった。またG8財務相会合では、逆風に直面している世界経済の過剰マネーの抑制策は先送りされ、石油や食糧の高騰の要因としての実需と投機の実体を先ず分析することが合意されただけである。
このような状況下では、錯綜した緊急課題につき、先進諸国間の単なる協議と対立調整を超えて、G8としての一致したメッセージを出すことには困難も予想される。このため、主催国日本のリーダーシップに対する期待が高まり、結果次第では力量が問われることにもなりかねない。ODA大国ナンバーワンの地位から5位に大きく退いた日本の首相が果たしてどのようなビジョンを持ち、いかなるリーダーシップを発揮するのか世界は注目している。
ここで想起したいことが一つある。1995年にグローバル・ガバナンス委員会が重視した「地球リーダーシップ」は、「最も力の強い国や人々だけでなく、世界全体とすべての人々を代表するものであり、それは国家からと同様に社会から、権威よりも連帯から、力を引き出し、説得と総意によって機能する」と定義されていた。このような見方からすれば、主要8ヶ国のリーダーには、目前の国益へのこだわりから時には離れ、洞爺湖の丘から思いを遠く地球社会の地平に馳せるスタンスが望まれる。殊に今次サミットの議長を務める福田首相は、第一義的に日本国を代表するよりは、むしろそのリーダーシップが依拠する日本社会を含む人類社会の連帯を念頭にサミットを主導すべきであろう。
(第2回に続く、全6回)
国連大学高等研究所客員教授
国際協力研究会代表
東京大学中退、米国コーネル大学で修士、コロンビア大学で博士号。国連法務部、中東PKO上級法律顧問を経て、外務省ジュネーブ代表部公使、フランクフルト総領事、国連事務次長補、カンボジア人道援助担当事務総長特別代表、国連人口基金事務次長を歴任。90年国際基督教大教授、のち同大COE客員教授。編著に『国際協力』(95)、Codes of Conduct for Partnership in Governance (99)、『国際NGOが世界を変える』(06)、『国連と地球市民社会の新しい地平』(06)、『社会的責任の時代』(08)など。
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