【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第1回)絡み合う緊急課題(前編)
国連大学高等研究所客員教授 功刀達朗
●今回のサミットの特徴
第1次石油ショック後の世界経済不況のさなか、1975年にフランスのランブイエで開かれた第1回から数えて今回は34回目の主要先進国首脳会議であり、日本がホスト役を務めるのは5回目となる。議題は当初から経済が主ではあるが、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻、頻発するテロ活動、原発事故、中東問題、大量破壊兵器の不拡散などの政治問題もしばしば取り上げられてきた。非G8諸国との対話も年々広がり、今年は中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、ナイジェリア、韓国、インドネシア、オーストラリアを含む14ヶ国の首脳も出席、過去最大規模となる。5年ごとに日本が主催するアフリカ開発会議(TICAD)の年とたまたま重なり、5月末の第4回TICADの成果をサミットにつなげる意味で、「開発・アフリカ」は重要議題の一つとなる。これ以外では「環境・気候変動」「世界経済」「政治問題」が主要テーマとして議論される。政治問題としては、北朝鮮とイランの核問題に関連し、不拡散体制の強化が取り上げられる他に、「平和協力国家」を目指す日本が重視する平和構築と人間の安全保障が論じられるであろう。国際機構論に関心を持つブラウン英首相から、サミット構成国の見直しや国連安保理改革を改めて提案されるとの予測もある。
今回のサミットを特徴付けるものとしては、世界経済を不況に向かわせたサブプライム・ローンの後遺症、世界各地でストや暴動を引き起こしている石油と食糧価格の急騰、金融危機とインフレ懸念、今や明白となった気候変動のもたらす脅威など、相互に絡み合う複合危機の進展に対処を迫られていることである。しかもこれらの問題は、緊急性を持ち、その対応次第では中長期的に問題を増幅するおそれがある。これらは情報通信の急速な発達とグローバル化の深化がもたらすhigh consequence risk(重大な事態を急速に引き起こすリスク)のカテゴリーに属し、テロリストによる大量破壊兵器の使用やサイバー攻撃のように、未然防止も事後処理も極めて厄介なものと言わざるを得ない。
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