トランプは「米国全土」を握ったわけではない

カリフォルニア州などは反旗を翻している

環境面でも2000年から2014年にかけて33の州が、各種のエネルギー政策を通じて、二酸化炭素の排出量を抑制しつつ経済規模を拡大させた。一部の州はすでに排出権取引を導入した。

進歩的な連邦制度がもたらした成功例はこれ以外にも、医療や刑務所改革、高等教育、労働者保護などをめぐる分野で、枚挙にいとまがない。

州と地方自治体の改革を後押しするために連邦政府は、解決策の指南役ではなく、測定可能な目標とインセンティブを提供するベンチャーキャピタリストの役を引き受ける。オバマ大統領も、教育や医療などの面で、そうした形での取り組みを進めてきた。

加州は反トランプの急先鋒になるか

世界第6位の経済規模と4000万人の人口を抱えるカリフォルニア州は進歩的な連邦主義のモデル的な存在であり、トランプ政権への対抗勢力のリーダーとなり得る。結束した民主党主導の州政府の下で、女性や農場労働者、移民、性的マイノリティなどの権利を拡大させた。自動車の排出ガス規制など環境保護の面でも先駆けている。

同州のジェリー・ブラウン知事は最近、気候データ収集に必要な衛星のための連邦政府の資金支援をトランプ政権が削減するのであれば、カリフォルニア州としては「自前の衛星を打ち上げてやる」と発言した。

また、カリフォルニア州と州内の大都市の多くはすでに、連邦政府との協力を制限して移民を保護する「聖域」の立場をとっている。

入国管理は法的には連邦政府の管轄だが、手が回らないのが実情だ。そして、トランプ氏が公約した支出と人員の削減によって連邦政府のリソース不足は濃厚となり、州や自治体への業務委託を拡大せざるを得なくなる。

さらに、カリフォルニア州議会は最近、トランプ政権の政策に反対する形で、移民の国外追放に反対する勢力を資金支援することなどを盛り込んだ新法案の審議に入った。

これに対してトランプ氏は、「聖域」への連邦政府の資金拠出を減らすと脅しをかけている。しかし、最近の最高裁の判例に基づけば、特定の政策の実施を州当局に「強制」する目的で連邦政府の支出に条件をつけることは難しくなっている。

2016年はポピュリズムが米国の政権を奪取した年として記憶されるかもしれない。一方で、国民や地域社会に信頼される州政府や地方自治体が、連邦制の進化と抵抗を担う新時代が始まった年として記憶されるかもしれない。

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