世論調査の専門知識を生かし、女性票獲得に知恵を絞り、激戦区に焦点を当て、さらにトランプ氏の扱い方に長けていたことが、コンウェイ氏が勝因をもたらしたポイントとされる。これまでの選対本部長がトランプ氏を変えようとしたのに対して、コンウェイ氏はチーム内においてもトランプ氏をいつも擁護する立場を取っていたようだ。
だが、大統領選に先立つ共和党の候補者選で、コンウェイ氏がテッド・クルーズ氏のスーパーPAC(政治資金団体)に携わっていた際には、トランプ氏批判の先鋒に立っていた。納税の不透明さやその攻撃的な性格、弱者を犠牲にしてビジネスの成功を収めたことなど、トランプ氏の弱みを次々に突いていた。
ところが、クルーズ氏が大統領選から撤退した後は、そのスーパーPAC がトランプの支持組織に変わり、コンウェイ氏はそのままトランプ支持、選対アドバイザー、選対委員長となったわけだ。どうにも一片の政治的ご都合主義を感じずにはいられない。選挙活動中はトランプ氏と行動を共にし、テレビ番組にも多出するセレブとなった。
名だたる政治家や企業にアドバイス
コンウェイ氏がトランプ氏に出会ったのは、2006年のことだ。トランプ氏が所有するビルのひとつ、国連ビル近くのトランプ・ワールド・タワーに2001年から居を構え、その住民委員になっていたときだ。トランプ氏はその後もコンウェイ氏に政治的なアドバイスを求めることが多かったという。コンウェイ氏の夫は弁護士で、かつてクリントン大統領の罷免を求める弾劾裁判に加担した人物である。
選対本部に本格的にかかわるきっかけとなったのは、強力な共和党の資金的支援者であるヘッジファンド・マネジャーのロバート・マーサー氏とのつながりと、スティーブ・バノン氏の推薦である。スティーブ・バノン氏は、トランプ新政権で主席戦略官・上級顧問を務めることが決まっているが、人種差別主義、国粋主義者と批判されている人物だ。
コンウェイ氏は1967年、ニュー・ジャージー州に生まれた。労働者の家庭で、トラック運転手の父親は彼女が2歳になるころに離婚し、ホテルのカジノに務める母親と、同居する祖母、叔母らによって育てられた。敬虔なカトリック教徒のイタリア系家庭で、親戚らが集まるにぎやかな環境だったようだ。
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