テスラの工場は「普通のメーカー」と全く違う フリーモント工場を見学してわかったこと

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すでにテスラが実現しているオートパイロット機能は、超音波センサーと前方(側方カメラ)によって、車線、周囲の車の状況、前方の車の速度から最適な加速やブレーキ、ハンドル操作を行ってくれる。車線変更も方向指示器を出すだけだ。

渋滞がなければ1時間で着くところを、渋滞で2時間以上かかることがしばしばある当地において、フリーウェイ(高速道路)でのオートパイロットは、体験すると手放せなくなる機能といえるだろう。

朝夕合計で3時間以上を車内で過ごす人も珍しくないというシリコンバレーでは、そのストレスを軽減し燃料を含む維持コストも低く抑えられるテスラは、不便な点があっても我慢しなければならない未来の乗り物ではない。今すぐに選ぶべき現実なのだ。

閉鎖されたGMの工場を再生

テスラは、2003年に設立された新興自動車メーカーで、本社はシリコンバレーの中心地、パロアルトにある。

CEOのイーロン・マスク氏は、立志伝中の人だ。1999年にオンライン金融サービスのX.comを設立(のちにPayPalと合併)。2002年にeBayがPayPalを買収したことから巨額の資金を得ることになった。その資金で設立したのが民間宇宙開発企業のスペースX。そして、テスラの資金調達を主導し、テスラの自動車第1号を手にしたのはマスク氏だった。

モデルX(左前方)とモデルS(右後方)。2017年にはこれに、コンパクトセダンのモデル3が追加される(写真:筆者撮影)

テスラがフリーモント工場を稼働させ始めたのは2010年。この中では、高級セダンタイプの「モデルS」、SUVタイプの「モデルX」、そして2017年末から「モデル3」が生産される予定だ。

もともとこの工場はゼネラルモーターズ(GM)が1982年に閉鎖させた設備を、トヨタとGMの合弁会社「NUMMI」が引継いだ経緯がある。日米貿易摩擦の最中の打開策のひとつであり、米国向けだけでなく、右ハンドルの日本向けのトヨタ車が生産されていたこともあった。ところが2009年のGM破綻でトヨタとの合弁が解消。閉鎖されていた工場を、今度はトヨタとテスラの提携によって、テスラの主力工場へと再生した。2016年までに6000人の雇用が新たに創出されたとしている。

フリーモント工場では、プレス、ボディ、組み立ての主に3つの工程が行われている。現在主力2車種として生産されているモデルSとモデルXはすべてアルミニウムで作られている。軽量で丈夫である点をメリットとしており、米国でも最も巨大な部類の油圧プレスで成形していく。こうしたプレスラインも、2年半前にはなかったものだという。そして、モデルS、モデルX向けのパーツを1週間分ストックして、自動車のボディ成形や組み立てへと回していくことになる。

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