テスラの工場は「普通のメーカー」と全く違う フリーモント工場を見学してわかったこと

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数千ものパーツが集められて車体に取り付けられていくが、その車体を動かすのもロボットだ。地面に敷かれた黒い磁石の線の上を動くロボットカートで、すべての車種が同じラインで組み立てられていく。

バッテリーの重量はおよそ550キロ。これを車体の下に敷くことで、テスラ車は低重心を実現している。10~12年という寿命を経過したバッテリーを簡単に交換できるよう、ネジ留めで固定される。テスラのソフトウエアはつねに更新され、長く乗れば乗るほど賢い車に育っていく楽しみがあるという。たった3分半で簡単にバッテリーが交換できる仕組みも、その思想の反映だ。

組み立てられたボディは新たに設置されたペイントショップと呼ばれる施設で塗装されるが、ここでは1週間に1万台をペイントできる。もちろんモデル3にも対応しており、将来の生産増強に耐えることができる見込みだ。このペイントショップでは、水を従来の82%減、排出するガスも97%カットするなど、環境への配慮に気を配っている。同時に、マスク氏が「車の美しさにこだわるべき」という考えを持つことから、仕上がりにも慎重に気遣う部門だ。

シリコンバレーの「スピード感」

テスラの工場は、とてもクリーンという印象を受けた。床や壁は白くペイントされており、従業員がランチを取ったり休憩できるカフェテリアのスペースが用意されて、働く環境にも気が配られている。これは、GM・トヨタから工場を引き継ぐ際に、当時の従業員からの要望も受け取り、反映させた結果だった。

そしてなにより、2008年に設立された会社が、すでにこれだけの自動車を作っているという事実に驚かされる。製品は自動車だが、スピードはシリコンバレーそのもの。まったく概念が違っていることを痛感させられる。

テスラは年間50万台の生産を行う計画を立てており、2016年には8万3922台の自動車を生産した。2015年に比べて64%増だった。この計画を達成するころには、今現在世界で生産されているリチウムイオン電池のすべてを、テスラが利用するほどバッテリーが必要になる。

そのため、テスラはパナソニックとともに、バッテリー需要をまかなうための工場「ギガファクトリー」をネバダ州に準備し、2017年1月に稼動を開始した。

これまでは、「18650」と呼ばれる直径18ミリ、長さ65ミリの電池が使われていたが、ギガファクトリーでは「2170」という直径21ミリ、長さ70ミリの一回り大きな電池が生産され、モデル3に採用される予定だ。また、この工場での完成車の生産も計画しているという。

そうした計画と、フリーモント工場で準備中のラインをみると、電気自動車メーカーの夢はまだまだ序盤であることを認識させられるのだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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