物価水準の財政理論を詳述すれば、次のようになる。政府の収入と支出の帳尻を考えれば、
と表せる(左側が収入、右側が支出)。これが、政府の予算制約式である。ここで、税収マイナス財政支出が基礎的財政収支となる。
つまり、今年の政策的経費を今年の税収で賄えているか否かをみる財政収支の指標で、基礎的財政収支が黒字だと、その分で国債の返済に充てることができる。
この収入と支出が毎年繰り返され、現在から将来にかけて政府の予算制約式を足し合わせれば、結局
となる(今年で経済が終わると考えればそのように導出できる)。
厳密には、
となるのだが、ここでは一般性を失うことなく(※)式に基づき簡略化して説明しよう。
物価水準の財政理論に従えば、(※)式に基づき、今年の物価が決まる。(※)式は、次のことを意味する。他の変数が不変ならば、
国債の返済先送りを続ければ物価は下がることに
これは、先の数値例でみても妥当する。今年の基礎的財政収支が悪いと、国債の返済財源が十分に用意できないこととなり、その分だけ国債返済の実質価値を目減りさせるように、マクロ経済で物価が上昇する形で調整される。また、今年返済が必要な国債が多いと、その分だけ国債返済の実質価値を目減りさせるように、マクロ経済で物価が上昇する形で調整される。
物価水準の財政理論に基づけば、今年の物価を上げたければ、今年の基礎的財政収支を悪化させればよい。基礎的財政収支を悪化させるには、財政支出を増やしたり減税したりして財政拡大させればよい。これが、ジャクソンホール会議でシムズ教授が語ったことである。前述のように通貨価値を目減りさせる(つまり物価を上げる)ように通貨供給を増やす、という話とは無関係である。
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